8/28/2016

プラトー打破とピリオダイゼーション


★トレーニングへの適応モデル
(1) 下図の左側のバケツが運動能力を表す。運動能力には様々な面がある。ストレングス、パワー、スピード、アジリティ、筋持久力、全身持久力など。その他にもそのスポーツ独自のスキル、チームプレイのスキルなど。

右側のジョウロがワークキャパシティを表す。ワークキャパシティとは、トレーニングセッションでどれだけトレーニングをこなせるか、次のトレーニングセッションまでにどれだけ回復できるか。ジョウロの中の水が体力で、図では体力が十分に満ちている状態。

(2) 運動能力のバケツを満たすだけのトレーニングを継続的に実施する。バケツに水(体力)を注ぎ込むイメージ。

(3) 運動能力が向上する。バケツのサイズが大きくなるイメージ。

(4) さらに向上し続けるには、強度とボリュームを上げたトレーニングを実施する必要がある。これにはより多くの体力を必要とする。

レジスタンストレーニングの例だと、スクワット3セット×8レップで向上しなくなったら(重量が伸びなくなったら)、スクワット5セット×8レップにしたり、レッグプレス2セット×8レップを加えたりする。順調に向上が続いている間は、ボリュームは無理に増やさない方が良い。その時点の運動能力の向上に必要な水準を大幅に越えるボリュームをこなしても、次のトレーニングセッションまでに体力が回復せず、長期的なトレーニング効果が低下する。





★プラトー
ある程度運動能力が向上すると、ワークキャパシティが足りなくなり、さらなる向上が難しくなる。この運動能力の向上が停滞した状態をプラトーと言う。






◇◇◇プラトーを打ち破るには◇◇◇


★運動能力の分割
運動能力を分割することで、それぞれの運動能力の向上にワークキャパシティが足りるようになる。一般的なスポーツ、例えばサッカーだったら、最初はゲームをプレイし続けることで、サッカーに必要な運動能力はある程度は向上する。しかしそのままでは上達が止まるので、持久力やアジリティなどの基礎能力を向上させる練習、パスやドリブルやシュートなどボールを扱うスキルを向上させる練習、チームプレイのスキルを向上させる練習などに分けて、それぞれの運動能力を向上させていく。(スポーツでは分割して反復練習した方がスキルの習得が容易という理由もある)

レジスタンストレーニングの例だと、最初は毎回のトレーニングセッションでBIG3+αを行い全身をトレーニングしていたのを、例えば上半身と下半身に分割して別の日にトレーニングする。そうすることで、各部位の強度とボリュームを上げることができ、向上を続けることが出来る。






★期間を分けて各運動能力を強化
数週間~数ヶ月の期間に分けて、それぞれの運動能力を集中的に強化していく。強化対象ではない運動能力は、何もしないと衰えていくので、維持のためのトレーニングを並行して行う。運動能力の維持に必要なトレーニングは、向上に必要な量よりもずっと少なくて済む。スポーツでは一般的には、土台となる基礎体力から始めて、基礎スキル、高度なスキル、コンディションを整えて試合に臨む、といった順番になる。

レジスタンストレーニングの例だと、中レップ(6-12レップ)のトレーニングを高ボリュームで行って筋肥大を目指す期間と、低レップ(1-5レップ)のトレーニングを行いストレングスの向上を目指す期間に分ける。また体力や時間の制約で全身の筋肉を同時に成長させるのが難しい状況では、特定の部位を集中的に強化し、他の部位は維持を目的として軽くトレーニングする方法もある。





★ワークキャパシティの拡大
プラトー打破の手段としては、運動能力を分割する以外にも、ワークキャパシティを大きくするというアプローチもある。運動能力を細かく分割しすぎても、各運動能力のトレーニング頻度が下がりトレーニング効果を得られなくなるので、いずれにせよ継続的な向上のためにはワークキャパシティを大きくする必要がある。ワークキャパシティを大きくするには、一般的に低強度・高ボリュームのトレーニングを行う。

レジスタンストレーニングでは、中レップと高レップ(15レップ以上)のトレーニングを多く行ったり、有酸素運動を行うことでワークキャパシティは大きくなる。低レップ中心のトレーニングをしている人は、プラトーが訪れたらワークキャパシティの拡大を意識すると良い。



★トレーニングの強弱
運動能力が向上するにつれ、さらなる向上にはよりハードなトレーニングが必要になる。しかしハードなトレーニングを連続すると体力の回復が追いつかなくなり、運動能力を向上させられるだけのトレーニングが行えなくなる(下図(3))。これを避けるために、トレーニングの強度とボリュームを下げる期間を挟んだり、休息を入れたりする。例えば、2週間はハードにトレーニングを行い、1週間は軽いトレーニングを行う、または一週間のうちでハードにトレーニングする日と軽くトレーニングする日を設ける。

体力を回復させずにハードトレーニングを続けると、そのトレーニングは体感ではハードだが実際には運動能力を向上させるほどハードではないので、停滞が続くことになる。体感でハードなトレーニングを行えているかどうかではなくて、運動能力のバケツを満たすだけのトレーニングを行えているかを考える必要がある。






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