8/28/2017

ストレングストレーニングにメンタルトレーニングを加えると効果アップ


(1)Effects of mental training on muscular force, hormonal and physiological changes in kickboxers
https://www.researchgate.net/publication/304781460_Effects_of_mental_training_on_muscular_force_hormonal_and_physiological_changes_in_kickboxers


ストレングストレーニングにメンタルトレーニングを加えると、ストレングストレーニングの効果が高まるという研究。


★実験方法
・被験者:53人の若い男性で全員ハイレベルのキックボクサー。平均値は、年齢24.2歳、身長175cm、体重70.4kg。レジスタンストレーニングの経験あり。メンタルトレーニング歴なし。

・被験者は3グループに分けられた。
1) PMG:フィジカルトレーニングとメンタルトレーニングを実施
2) PG:フィジカルトレーニングのみ実施
3) CG:コントロールグループ。フィジカルトレーニングもメンタルトレーニングも無し。

・トレーニング期間:12週間

・トレーニング頻度:週3回

・フィジカルトレーニング種目:ベンチプレス、ハーフスクワット(実質的にはパラレルスクワット)、カウンタームーブメントジャンプ(腕を振らない垂直跳び)、メディシンボール投げ

・メンタルトレーニング
a) イメージトレーニング
目を閉じて、一人称視点でフィジカルトレーニングを実施することをイメージする。実際の動作を想像し、動作に使う筋肉を全力で収縮させることをイメージする(実際には筋肉を収縮させない)。実験ではフィジカルトレーニングを全種目終えた後に、30分かけてフィジカルトレーニングと同じ種目を同じセット数とレップ数でイメージトレーニングを実施。
b) モチベーションを高めるセルフトーク
トレーニング中やその前後に感じたネガティブな思いを書き出す→それをポジティブでモチベーションを高める内容に変更し、トレーニングの実施中に自分に語りかける。例えばベンチプレス中に、「俺はもっと重いウェイトを持ち上げられるッ!!!」と自分に向けて鼓舞する。フィジカルトレーニングとメンタルトレーニングの両方でセルフトークを実施。


★実験結果
・運動パフォーマンス(PMGがメンタル+フィジカル、PGがフィジカルトレーニングのみ)
ベンチプレス1RM:PMG+26.5% / PG+15.7%
ハーフスクワット1RM:PMG+27.2% / PG+16.3%
カウンタームーブメントジャンプ:PMG+16.2% / PG+8.4%
メディシンボール投げ:PMG+27.9% / PG+14.2%

運動パフォーマンスの向上は、ストレングストレーニングでもプライオメトリックトレーニングでも、メンタルトレーニングを加えたグループの方が良い結果を出した。またメンタルトレーニングを加えたグループは、テストステロン/コルチゾール比の上昇、心拍数の低下、血圧の低下が観察され、ストレスレベルが低く、アナボリックに適した身体状況であることが示唆された。






★コメント
ストレングストレーニングにメンタルトレーニングを加えると、ストレングストレーニングの効果がかなり高まるようだ。メンタルトレーニングにこれほど効果があるとは、個人的には驚きだった。メンタルトレーニングが効果を発揮する理由についてはいくつか考えられ、

a) 動作のイメージを繰り返し描くことでフォームが良くなり、より重い重量を挙上できるようになる。これはストレングストレーニングだけでなく、多くのスポーツで有効。
b) セルフトークで気合が入ったり、イメージトレーニングで筋肉への負荷のかけ方が上手くなったりして、トレーニングの質が高まり、より筋肥大する。(2)の研究では、メンタルトレーニングを加えたグループのみ、腿の太さの変化が有意差あるか微妙なラインになっていて、筋肥大の可能性が示されている。
c) 重い重量でも恐れず挙上できるようになる。特に下半身種目は重量に圧倒されやすいので、メンタル面でのアプローチが有効だと考えられる。(2)の研究では、ベンチプレス1RMは有意差なしだけど、レッグプレス1RMでメンタルトレーニンググループがより良い結果を出せている。
d) イメージトレーニングを繰り返すことで脳からの神経信号の伝達が良くなって、より多くのモーターユニットをより強く、より協調して収縮できるようになる。(3)の研究ではフィジカルトレーニングを行わずメンタルトレーニングのみで、単関節動作(肘の屈曲)のストレングスが向上している。

イメージトレーニングは、三人称視点(他人の動作をビデオ映像で見るような視点)は効果が薄く、一人称視点の方が効果が高いようだ。目を閉じ、身体の感覚を意識し、セットポジションについてバーを握ることを想像し、バーベルの重さをイメージし、一人称視点で筋肉と関節の動作をイメージし、全力で筋肉を収縮させるつもりで脳を働かせる。実際のトレーニング動作と同じテンポ、同じレップ数、同じ力の入れ方でイメージを行い、コンセントリックで全力で力を入れ挙上速度を速くすることを意識すると良い。

(5)の研究によると、セット間にイメージトレーニングを行っても、脳が疲労してパフォーマンスが低下することはないようなのでデメリットは特にないだろう。一方で、イメージトレーニングとセルフトークを行うことで自信が深まり、モチベーションが高まり、ストレスレベルを低くできる。メンタルトレーニングを上手に活用すると、トレーニングの効果を大きく高められ、メンタルのコンディションを良好に保つことで質の高いトレーニングを長期間続けることが出来るだろう。


★実践方法
(1)の研究ではイメージトレーニングをフィジカルトレーニングが終わった後に30分間行っているけど、これだとトレーニング時間がかなり伸びる。(2)の研究ではセット間インターバルにイメージトレーニングを行って効果を得ているので、セルフトークを伴ったイメージトレーニングをセット間インターバルに行い、セット中もセルフトークで自分を鼓舞するのが時間効率が良いと思う。また実際の動作を行った直後だと、動作のイメージもしやすいだろう。

具体的には、スクワット、デッドリフト、ベンチプレスなどコンパウンドのバーベル種目のセット間インターバルに、セルフトークを伴ったイメージトレーニングを行うのが良いだろう。フォームの改善や重量への恐れの克服といった点で、メンタルトレーニングで大きな効果を得られることが期待できる。またこれらの種目はセット間インターバルに息を整えて疲労からの回復を行う必要があるので、身体を休めつつメンタルトレーニングを行うとうまく時間を使うことができる。

アームカールなどのアイソレート種目はセット間インターバルに身体を休める必要性が低いし、フォームの改善の余地もほとんど無いだろうから、スーパーセットで他の種目をどんどんやっていった方が時間効率が良いと思う。



参考文献:

(1)Effects of mental training on muscular force, hormonal and physiological changes in kickboxers
https://www.researchgate.net/publication/304781460_Effects_of_mental_training_on_muscular_force_hormonal_and_physiological_changes_in_kickboxers

(2)Benefits of Motor Imagery Training on Muscle Strength
https://www.researchgate.net/publication/44636022_Benefits_of_Motor_Imagery_Training_on_Muscle_Strength
一人称イメージトレーニング vs コントロール。両グループとも同じ内容のフィジカルトレーニングを実施。イメージトレーニングはセット間インターバルに実施。ベンチプレス1RMは有意差なしだけど、レッグプレス1RMでメンタルトレーニンググループがより良い結果を出せている。

(3)Kinesthetic imagery training of forceful muscle contractions increases brain signal and muscle strength
https://www.researchgate.net/publication/257889303_Kinesthetic_imagery_training_of_forceful_muscle_contractions_increases_brain_signal_and_muscle_strength一人称視点イメージトレーニング vs 三人称視点イメージトレーニング vs コントロール。フィジカルトレーニング無し。一人称視点イメージトレーニングのみストレングスが向上。

(4)Effects of cognitive training strategies on muscular force and psychological skills in healthy striking combat sports practitioners
https://www.researchgate.net/publication/296573295_Effects_of_cognitive_training_strategies_on_muscular_force_and_psychological_skills_in_healthy_striking_combat_sports_practitioners一人称イメージトレーニング vs 一人称イメージトレーニング&セルフトーク vs コントロール。両グループとも同じ内容のフィジカルトレーニングを実施。セルフトークも行ったグループはコントロールグループに比べてストレングスの伸びが優れていただけでなく、3グループの中で最も自信が深まり、モチベーションが高まった。

(5)Does a mental training session induce neuromuscular fatigue?
https://www.researchgate.net/publication/260562449_Does_a_Mental-Training_Session_Induce_Neuromuscular_Fatigue
セット間インターバルにメンタルトレーニングを行っても、脳の疲労でフィジカルトレーニングのパフォーマンスが低下することはなさそう。

(6)Effects of relaxation and guided
imagery on knee strength, reinjury anxiety, and pain following
anterior cruciate ligament reconstruction.
https://www.researchgate.net/publication/232446753_Effects_of_Relaxation_and_Guided_Imagery_on_Knee_Strength_Reinjury_Anxiety_and_Pain_Following_Anterior_Cruciate_Ligament_Reconstruction
リハビリにもメンタルトレーニングは有効。

(7)Use of mental imagery to
limit strength loss after immobilization.
http://campus.univ-lyon1.fr/sciencespourtoi/files/2014/02/Etude_Newsom.pdf
怪我などで動けない時にメンタルトレーニングを行うと筋力低下を和らげる可能性。

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