3/30/2018

筋肉への意識と筋肥大の関係

The Mind-Muscle Connection: A Key to Maximizing Growth?
http://www.lookgreatnaked.com/blog/the-mind-muscle-connection-a-key-to-maximizing-growth/

Differential effects of attentional focus strategies during long-term resistance training
https://www.researchgate.net/publication/323740477_Differential_effects_of_attentional_focus_strategies_during_long-term_resistance_training

鍛えたい筋肉を意識し、しっかり力を入れて負荷を感じながら筋トレすることで筋肥大効果が高まるのかどうかという研究。

筋トレ時の意識の仕方と筋肉の活動レベルを調べた研究はいくつかあって、低重量・中重量(80%1RM程度までの重量)なら個別の筋肉に力を入れることを意識することでその筋肉の活動レベルが高まるという結果が出ていた。しかし、長期的にその方法でトレーニングを続けると筋肥大に有利かどうかという研究はなかった。それを調べた初の研究。

ちなみに高重量だと、個別の筋肉に力を入れることを意識する余裕はなくなって、必要な筋肉全てに効率的に力を入れて全力で持ち上げることになる。


★動作時の意識の仕方(前提知識)
英語だと external/internal focus や cue なんだけど、ちょうどよい日本語が思いつかないので、とりあえず外部意識・内部意識と書いておきます。

外部意識:動作の結果、外部環境に及ぼす効果や結果をイメージする。
内部意識:自分の身体がどのように動くかを意識する。

外部意識はスポーツのパフォーマンス向上に有利なことがこれまでの研究でわかっている。自分の身体の関節や筋肉を意識しながら動くよりも、外部に意識を向けた方が結果として効率的に身体が動くようになる。


★被験者
若い男性。トレーニング経験無し。30名(完走27名)。

※自分なりの筋トレのやり方が身についていると、筋トレ時の意識の仕方を研究者側の指示通り行わないかもしれないので、トレーニング経験無しの人を被験者にしたとのこと。


★グループ分け
筋トレ時の意識の仕方によって2グループに分ける

・内部意識グループ→「筋肉を搾り上げろ!」と指示
・外部意識グループ→「重りを持ち上げろ!」と指示


★トレーニング種目
・バーベルアームカール
・レッグエクステンション

各種目4セット/8-12レップを限界まで/セット間インターバル2分


★トレーニング期間・頻度
8週間・週3日


★食事
被験者は各自これまで通りの食生活を続ける。サプリメントは研究者側から支給されたもの以外は摂取禁止。

支給サプリメント:トレーニング日にホエイプロテイン(たんぱく質25g含有)を支給。被験者はトレーニング直後にこれを摂取。


★測定項目
・体組成:インピーダンス式体組成計
・筋肥大:上腕二頭筋と大腿四頭筋(大腿直筋と外側広筋)の厚みを超音波画像診断装置で測定。
・ストレングス:肘の屈曲と膝の伸展のアイソメトリックでの最大収縮力を測定。


★実験結果
・体組成
グループ間で有意差無し。

・筋肥大
上腕二頭筋のみグループ間で有意差ありで、内部意識グループの方が筋肉の厚みの増加率が約2倍になった(+12.4% vs +6.9%)。大腿四頭筋についてはグループ間で有意差無しだが、小さい効果量で外部意識グループが優位。

・ストレングス
グループ間で有意差無し。膝の伸展は小さい効果量で外部意識グループが優位。肘の屈曲は中程度の効果量で内部意識グループが優位。


★考察
筋肥大とストレングスの結果を効果量も含めて総合的に見ると、アームカール(肘の屈曲)は内部意識グループがはっきりと良い結果で、レッグエクステンション(膝の伸展)は外部意識グループがわずかに良い結果。

内部意識グループ参加者からは、アームカールは指示通り筋肉に力を入れやすいけど、レッグエクステンションは入れにくいとのコメントが聞かれた。一般的に腕は細かい作業が得意で、脚は筋肉群にまとめて力を入れて大きなパワーを発揮するのが得意なので、腕の方が個別の筋肉を意識して力を入れやすいのかもしれない。もしくは屈曲と伸展の違いで、脚もレッグカールだったら内部意識で力を入れやすいかもしれない。または、レッグエクステンションで絞り上げるように力を入れると、私の経験では内側広筋の活動が高まる感じがするので、測定箇所の大腿直筋と外側広筋には影響が出ていない可能性もある。


★コメント
絞り上げるように筋肉に力を入れてトレーニングを続けると、筋肥大が高まることが期待される。トレーニング次第では腕以外の筋肉も、内部意識で上手く絞り上げるように力を入れられるようになる可能性があるので、筋肥大を目指したい場合はトライしてみるのが良いだろう。

注意点としては、内部意識と筋肥大の関係を示す研究は、この研究しかまだ行われていないこと。信頼性の高い研究だと思うが、繰り返し再現されることで確度が高まる。

それと全ての筋トレ種目でこのやり方が効果を発揮するわけではなくて、現状では単関節種目の中レップ(8-12レップ程度)で個別の筋肉に力を入れることを意識しつつ筋トレすると筋肥大が高まると考えられる。

競技パフォーマンスの観点からは、個別の筋肉をアイソレートして力を入れる癖をつけると、身体全体の運動パフォーマンスが低下する恐れがあるので注意したい。BIG3のパフォーマンスを上げたい場合も外部意識でトレーニングを行う方が良いだろう。

2/28/2018

維持カロリーを挟むダイエット方法

カロリーカットを続けるダイエット方法と、カロリーカットの間に維持カロリー期間を挟むダイエット方法を比較した研究。

Intermittent energy restriction improves weight loss efficiency in obese men: the MATADOR study
https://www.nature.com/articles/ijo2017206


★被験者
肥満の男性
BMI30–45
25-54歳



★ダイエット方法
2グループに分けて比較

a) カロリーカット継続グループ(CON) 19名
カロリーカットを16週間継続する。

b) カロリーカットと維持カロリー交互グループ(INT) 17名
カロリーカットを2週間、その次に維持カロリーを2週間、その次にカロリーカットを2週間・・・というダイエットを続ける。カロリーカット2週間×8回、維持カロリー2週間×7回。合計30週。

両グループともにダイエット前の4週間の調整期間(体重変動を見て維持カロリーを調整)と、ダイエット後の8週間の維持カロリー期間がある。

カロリーカット期間はどちらのグループも合計で16週間になる。一日あたりのカロリーカットの程度も同じなので、両グループともトータルで同じカロリーカット量のダイエットを行った。違いは維持カロリーの期間を挟むか挟まないか。



★摂取カロリー
カロリーカット期間は維持カロリーの67%を摂取する(33%のカロリーカット)。ダイエットが進むと安静時代謝が低下するので、それに合わせて摂取カロリーを調整する。安静時代謝はカロリーカット期間が4週間に達するごとに測定する。



★食事提供方法
大部分は研究者側で支給。追加の食べ物を研究者と相談の上で被験者が選択して摂取。



★マクロ栄養素
計画では、タンパク質15-20%、脂質25-30%、炭水化物50-60%。



★運動
特に言及されていない



★結果

グループごとの体重変化。交互グループ(INT)の方が体重が大きく減った。横軸の週数はカロリーカットを実施した週数で、継続グループ(CON)はカロリーカットを実施した週数イコール経過週数だけど、交互グループ(INT)は維持カロリー期間が挟まるので実際に経過した週数は約2倍になる。


交互グループのカロリーカット期間(ER)と維持カロリー期間(EB)における体重変化。維持カロリー期間では、カロリー調整が上手くいき体重変化が抑えられていることがわかる。



グループごとの除脂肪体重変動。両グループとも除脂肪体重の減少は抑えられている。


グループごとの体脂肪量変動。



両グループの安静時代謝の推移。両グループともダイエットが進むにつれて安静時代謝が低下している



除脂肪体重と体脂肪量の変化を考慮した安静時代謝。エネルギーを消費する体組織が減ればそのぶん安静時代謝も低下するが、体組織の減少以上に安静時代謝が低下する(つまり省エネ体質になる)ことがある。このグラフではそれを判断できる。結果は、交互グループ(INT)の方が除脂肪体重と体脂肪量の変化を考慮した安静時代謝の低下は小さくなっていて、リバウンドしにくいダイエットになっている。



ダイエット実験の終了後も含めた体重変化。交互グループ(INT)の方が体重のリバウンドが抑えられている。安静時代謝の低下が緩やかだったことが寄与していると考えられる。またダイエット中に維持カロリー期間を挟むことでメンタル面でのダイエット疲れが軽減されダイエット終了後の暴食が避けられたり、ダイエット終了後に維持カロリーの食生活に戻す時にどれくらい食べれば良いか経験済みで体重を維持しやすいといった要因もあると考えられる。



★コメント
カロリーカットと維持カロリーを交互に繰り返すダイエット方法の方が良い結果が出た。体重の減り方も、安静時代謝の低下も、ダイエット実験終了後のリバウンドも、どれもはっきり良い結果が出ている。

注意点としては、ダイエットにかけた期間に大きな差があるのであまりフェアな比較とは言えないこと。継続グループでも一日あたりのカロリーカットの幅を緩くして30週かけて減量すれば、安静時代謝の落ち込みは緩やかになるかもしれない。

ただそれでも交互グループのカロリーカット8週時点(14週経過)と継続グループの16週時点の体重減少量がほぼ同じで、維持カロリーを挟んでも同じ期間で同じくらい体重を減らせるという結果が出ている。

実践を考える場合も、維持カロリー期間でメンタル面での息抜きを入れていくと長期間のダイエットを続けやすいだろう。


★ダイエット休憩の実践
ダイエット中にカロリーカットを一旦中断して、摂取カロリーを増やすことをダイエット休憩と言う。(休憩は break を訳してるのだけど、日本語だとなかなか良い単語が見つからない)

ダイエット休憩の期間の長さは、2週間でかなり効果が出ている。論文では維持カロリー1-2週間で代謝低下が回復するかもと書かれているが、レファレンス先の論文の内容が関係なさそうで1週間という数字を出した根拠がよくわからない。

ボディメイクで減量を行う際は、カロリーカット4週間-6週間ごとに1-2週間の維持カロリー期間を入れるのが良いと思う。2週間ごとに維持カロリー期間を2週間入れると、減量完了まで時間がかかりすぎる。1週間では十分に回復しないかもしれないが、そこは時間効率との兼ね合い。

継続グループと交互グループの体重減少ペースの差は、4週間だと小さいけど8週間になると大きくなる。この研究の被験者はかなりの肥満なので、普通体型の人が減量する場合は8週間よりも前に体重減少ペースが低下するだろう。

個人的な経験でも8週間続けてのカロリーカットはメンタル的にもキツイし、体重が減らなくなってくるのでキツイ。目標の体重減少量が小さく(目安としては水分変動除いて体重5%以内の減量)、8週間程度で減量完了予定なら、維持カロリー期間無しでも良さそうだけど、目標の体重減少量が大きく長期的に減量を続けるなら、4週間-6週間のカロリーカットを続けたら1-2週間の維持カロリー期間を入れるのが良いと思う。

気をつけることは、ダイエット休憩中に好き放題に食べず、維持カロリーを守ること。他にもダイエット休憩を挟むダイエット方法の研究はいくつかあるけど、それらの研究では食事がコントロールされてなくて、ダイエット休憩をいれるダイエット方法の優位性があまり示されていない。この研究のようにカロリー管理をきちんすれば、ダイエット休憩が効果を上げると考えられる。


★管理された維持カロリー
筋トレを日常的に行っている人だと、減量中はグリコーゲンと水分が減っていて、リフィードではそれが一気に回復するので、維持カロリーであっても体重が2,3kg増えることも普通に起こる。

筋トレでグリコーゲンが枯渇している人なら、リフィード開始後1,2回の食事は炭水化物中心にオーバーカロリーしてもグリコーゲン補充に回されるので良いだろう。慎重に行うなら、減量前の維持カロリーから10%程度引いたカロリーをコンスタントに摂取するのが良いと思う。摂取しているカロリーが維持カロリーかどうかは、体重測定と過去の経験から判断するのが良いだろう。ダイエット休憩の開始後1,2日で体重が一気に増えて、その後体重変動が安定するならだいたい維持カロリーになっている。摂取カロリーが維持カロリーに満たないと代謝回復の効果が出にくいので、恐れずしっかり食べたほうが良い。



★ついでの雑感
ダイエット休憩については、Lyle McDonald の A Guide to Flexible Dieting という2005年の書籍に詳しく書かれている。Lyle McDonald の古い書籍は、今となっては古くなった研究の不完全なデータを使い、ある程度の推測で埋め合わせながらに書かれているのだけど、最近のより良い研究でその主旨の正しさが証明されるケースが見受けられて凄いなと思う。彼の凄さはマニアックに論文を漁っていることだけではなくて、ビッグピクチャーの把握の仕方。

エビデンスベースで栄養やトレーニングを語る人は増えてきているけど、これらの分野は研究がまだまだ不完全で、ビッグピクチャーの把握や経験などによる隙間の埋め合わせが不可欠で、その辺の能力差がエビデンスを上手く扱えるかどうかの差になるのだと思う。



関連記事:
減量時の食事調整例

減量ペースの違いによる体組成変化と運動パフォーマンス変化


1/26/2018

タンパク質の種類と筋肥大

現在主流の考えだと、長期的な筋肥大に重要なのはタンパク質の種類や摂取タイミングよりも一日のトータルのタンパク質摂取量で、ある程度のタンパク質摂取量を確保すれば、それ以上摂取しても筋肥大は高まらない。

関連記事:ゴールデンタイムはあるのか?

最新研究だと、
(1) A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28698222
タンパク質摂取量1.62g/kg/dayを超えると、追加でプロテインサプリメントを摂取しても筋肥大がさらに促進されるわけではないという結果。


しかし、へえ~と思った研究があったので、タンパク質の種類による筋肥大への影響の違いをちょっと調べてみました。

★ホエイとサテライト細胞
実験期間中の筋肥大に違いがあるかどうかだけでなく、長期的な筋肥大の差につながる可能性のあるサテライト細胞の増加に違いがあるかどうか、という視点。

(2) Effects of Whey, Soy or Leucine Supplementation with 12 Weeks of Resistance Training on Strength, Body Composition, and Skeletal Muscle and Adipose Tissue Histological Attributes in College-Aged Males
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5622732/
若い男性が12週間のレジスタンストレーニングを実施。サプリメントの内容が異なる5グループに分けて、レジスタンストレーニングの効果に違いが出るか調べた研究。

サプリメントは、プラシーボ(マルトデキストリン)、ロイシン、ホエイプロテイン・コンセントレイト、ホエイプロテイン・ハイドロリセート、ソイプロテイン・コンセントレイト。

プラシーボ以外のサプリメントの摂取量は、ロイシン含有量約3gで揃えられている。1回あたりの摂取量は、ホエイがタンパク質含有量約25g、ソイがタンパク質含有量約39g。これを1日2回摂取。

プラシーボグループ含めて、グループ間ではストレングスの伸び、及び全身の筋肉量と筋繊維の断面積の変化に有意差は出なかった。プラシーボグループでも除脂肪体重を考慮するとタンパク質摂取量がそれなりに多かったことから、サプリメントでタンパク質をさらに摂取しても筋肥大に差が出なかったと考えられる。

しかしサテライト細胞の数については違いが出ていて、プラシーボとロイシンはサテライト細胞の数が有意差なしだったが、ホエイプロテイン摂取の2グループはサテライト細胞が増えた。ソイは有意差有りには達しなかったが増える傾向があった。プラシーボとロイシンに比べて、ホエイとソイのグループはトータルのタンパク質摂取量が多くなっているので、これが影響した可能性もある。ただトータルのタンパク質摂取量はソイが最も多いけど、サテライト細胞の増加はソイよりもホエイの方が優位になっているので、タンパク質摂取量以外のファクターがある感じもする。
 
サテライト細胞の増加は筋肥大ポテンシャルの向上を示唆していると考えられる。実験期間中の筋肥大に差がなくても、サテライト細胞の数に差が出ていれば、長期的には筋肥大に差がつくかもしれない。

サテライト細胞の働きについては以下を参考に

関連記事:筋肥大のメカニズム

ホエイとプラシーボでサテライト細胞の増加に違いが出るかどうかを調べた研究は他にもいくつかあって、部分的にホエイ優位の結果か、もしくは有意差は無いけど傾向としてはわずかにホエイ優位という結果が出ている。これらの研究もホエイの方がプラシーボよりもトータルのタンパク質摂取量が多いので、ホエイの効果によるものなのか、タンパク質摂取量の違いによるものなのか、はっきりしない面もある。

以下の2つの研究でのホエイの摂取量は1日約20g

(3) Influence of exercise contraction mode and protein supplementation on human skeletal muscle satellite cell content and muscle fiber growth.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4280155/

(4) Protein Supplementation Does Not Affect Myogenic Adaptations to Resistance Training.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28346813/
https://www.utmb.edu/pepper/publications/2017%20Pubs/PMC5433887.pdf

差は微妙なものだと思われるが、プラシーボよりもホエイの方が不利になることはなさそうなので、筋肥大の最大化を目指す場合はホエイプロテインを飲むのが良いと思う。除脂肪体重約60kgの若い男性が1日あたりタンパク質含有量約50gのホエイプロテインを摂取した(2)の研究が、サテライト細胞の数にもっとも差が出ているので、実践する場合はこの量が目安になるだろう。


★肉・魚と筋肥大
(5) Effects of an omnivorous diet compared with a lactoovovegetarian diet on resistance-training-induced changes in body composition and skeletal muscle in older men.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10584048
http://ajcn.nutrition.org/content/70/6/1032.long

高齢者(51–69歳)が12週間のレジスタンストレーニングを実施。食事内容が異なる2グループに分けて、レジスタンストレーニングの効果に違いが出るか調べた研究。
片方のグループは、卵と乳製品は食べても良いベジタリアン食(ラクト・オボ・ベジタリアン)。もう片方は、肉でもなんでも食べる通常の食事(ここでの肉は魚も含む)。
被験者は両グループとも、実験前の食事では肉も魚も食べている。

結果は、通常の食事グループの方が筋肥大で良い結果が出ている。除脂肪体重はラクト・オボ・ベジタリアンが-0.8kg、通常食が+1.7kg。脚から採取した筋繊維は、タイプ1が変化無しで、タイプ2が両グループとも太くなったが、通常食の方がより太くなった(通常食+16.2%、ラクト・オボ・ベジタリアン+7.3%)。ストレングスの伸びはグループ間で有意差なしだけど、通常食の方がより伸びた傾向。

食事内容による筋肥大効果の違いがどのような要因によるものか推測すると、

1) 摂取タンパク質の量と質の違い
ラクト・オボ・ベジタリアングループの方がタンパク質摂取量と動物性タンパクの割合が低いので、それが筋肥大に悪影響を与えている可能性がある。ただグループ間でそれほど大きな差では無いし、高齢者がレジスタンストレーニングを行った関連研究ではラクト・オボ・ベジタリアン食だとタンパク質摂取量が1.6g/体重kg/dayでも筋肥大しなかったとのことなので、摂取タンパク質の違いは筋肥大の差にほとんど影響を与えていないのではと考えられる。

2) 亜鉛不足の可能性
ベジタリアン食は亜鉛が不足しやすい。亜鉛が不足すると筋合成に悪影響が出るようだ。
(6) Effects of magnesium and zinc deficiencies on growth and protein synthesis in skeletal muscle and the heart.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1772873

3) クレアチン不足
ラクト・オボ・ベジタリアングループは、食物からのクレアチン摂取量がほぼゼロになるので、筋肥大に悪影響が出ている可能性がある。またクレアチンローディングの逆で、水分が抜けて除脂肪体重が減っているのかもしれない。

関連記事:クレアチンについて

4) テストステロンレベル
今回の研究では計測していないが、もしかしたらラクト・オボ・ベジタリアングループはテストステロンレベルが低下していて、それが筋肥大に悪影響を与えた可能性がある。
(7) Serum sex hormones and endurance performance after a lacto-ovo vegetarian and a mixed diet.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1435181?dopt=Abstract

要因ははっきりしないし、現時点の科学で解明できない要因もあるのかもしれないけど、筋肥大の差はくっきり出ているので、筋肥大を目指すには肉・魚は食べたほうが良いと思われる。ベジタリアン食にこだわる場合は、サプリメントで亜鉛とクレアチンを摂取すると良さそう。

ちなみに健康面を考えるなら、赤身肉ばかり食べず、タンパク質源は分散させた方が良いだろう。

関連記事:低炭水化物食とタンパク質源の健康への影響


★ソイと筋肉のダメージ
(8) Soy Beverage Consumption by Young Men
http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1300/J133v03n01_03?journalCode=ijds19

(9) Four Weeks of Supplementation With Isolated Soy Protein Attenuates Exercise-Induced Muscle Damage and Enhances Muscle Recovery in Well Trained Athletes: A Randomized Trial.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5098124/

ソイプロテインの継続的な摂取で、ソイのもつ抗酸化作用により筋肉のダメージが軽減されるという研究がある。筋トレによる筋肉へのダメージを減らせれば、短いスパンで次のトレーニングを行うことが出来、長期的に良い結果を得られると考えられる。ただ一般的な日本人の食生活は欧米に比べて大豆製品の摂取量が多いので、追加でソイプロテインを摂取しても研究のような効果がないかもしれない。


★まとめ
実践面では、ホエイプロテインを摂取、肉と魚を食べる、トータルのタンパク質摂取量は1.6-2.0g/kg/day程度(維持カロリー以上摂取)というのが筋肥大効果を高めるタンパク質の摂取の仕方だと思う。豆製品も食べておくとトレーニング効率を高められるかもしれない。

関連記事:タンパク質摂取量の目安

12/19/2017

限界まで追い込んだ場合と追い込まなかった場合の回復の違い

Time course of recovery following resistance training leading or not to failure.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28965198

各セット限界まで追い込んだ場合と、限界レップ数の半分で止めた場合の、トレーニング後72時間の疲労回復の経過を比較した研究。


★実験方法
種目はスミスマシンでのベンチプレスとスクワット

重量はすべて10RM(75%1RM)

以下の3パターンについてトレーニング後72時間までの回復の経過を比較している。

(1) 3セット×5レップ(非限界)
(2) 6セット×5レップ(非限界)
(3) 3セット×10レップ(限界)

(2)と(3)のパターンは、トレーニングボリュームを等しくしつつ、非限界と限界で疲労度合いがどう変わるかを調べている。

コンセントリックを全速力で挙上しているので、非限界パターンはパワートレーニングになっている。被験者はトレーニング歴あり。レジスタンストレーニングに慣れているので、普段トレーニングしている人の参考になる。


★疲労度合いの測定項目
血液検査
- アンモニア、テストステロン、コルチゾール、成長ホルモン
- クレアチンキナーゼ(筋肉のダメージの指標)

運動パフォーマンス
- カウンタームーブメントジャンプ(以下CMJ)
- ベンチプレスとスクワットの中重量での挙上速度(疲れていると挙上速度が低下する)


★結果
非限界パターンは3セットも6セットも、トレーニング直後のCMJが低下したのみで、ベンチプレスとスクワットの挙上速度はトレーニング直後も翌日以降もパフォーマンスが変わらず。

限界パターンは、スクワットとベンチプレスの挙上速度が24-48時間後まで低下、CMJは48時間後まで低下。またトレーニング直後のパフォーマンスの落ち込みが激しい。

クレアチンキナーゼを見ると、非限界6セットパターンはトレーニング48時間後にベースラインに戻ったのに対し、限界パターンは72時間後にベースラインに戻った。上昇の程度も限界パターンの方が大きく、トレーニングボリュームが同じでも限界まで追い込んだ方が筋肉のダメージが大きいことが示唆される。



☆コメント
トレーニングからの疲労回復にかかる時間は概ねボリューム依存で、例えば高強度・低レップトレーニング(8セット×3レップ)と高ボリュームトレーニング(8セット×10レップ)とでは、高ボリュームトレーニングの方が回復に時間がかかることがわかっている。

Comparison of the recovery response from high-intensity and high-volume resistance exercise in trained men.
https://www.researchgate.net/publication/315684978_Comparison_of_the_Recovery_Response_from_High_Intensity_and_High_Volume_Resistance_Exercise_in_Trained_Men

今回の研究は、トレーニングボリュームが同じでも、追い込み度が高いと回復に時間がかかることが明確に示されている点が新しい。

全セット限界までやった方が疲労が大きく回復に時間がかかることはわかった。では、トレーニングの効果はどうなのだろう。限界までやった方が筋肥大とストレングスの向上は大きくなるのだろうか。

一回のトレーニングセッションがもたらす効果を考えてみると・・・
筋肥大を促す刺激は大きく分けて、メカニカルテンション、代謝ストレス、筋肉へのダメージと言われている。ボリュームが等しい(メカニカルテンションが等しい)場合、限界までやった方が代謝ストレスと筋肉のダメージが大きくなるので、より強い刺激が筋肉に入ると考えられる。

長期的な視点を考えると・・・
例えば今回の研究のような「1部位あたり限界までを3セット」or「1部位あたり限界レップ数の半分を6セット」というトレーニングメニューを週2回ペースで続けていくなら、限界までやった方が筋肥大とストレングスの伸びは大きいと思う。このメニューだとトレーニングボリュームが小さいので、全セット限界までやっても身体が扱えるボリュームと疲労の限度まで余裕があるだろう。トレーニングにあまり時間が割けず、限られた時間でなるべく効果を得たい場合は、このようなボリュームの小さいトレーニングメニューを、セット間インターバルを長めに取りつつ全セット限界までやるのも良いと思う。

しかし例えば、「1部位あたり補助種目も含めて限界までを10セット」を週3回ペースで続けたりすると、おそらく身体のキャパシティを超えてしまう。限度を超えた疲労によりトレーニングの質が低下したり、ストレスレベルが高くなりアナボリックに不利な体内環境になったりして、トレーニング効果が低下する恐れがある。

またトレーニングセッション内での悪影響もある。限界まで追い込むとトレーニング直後のパフォーマンス低下が激しいので、スクワットやベンチプレスで全セット限界までやると、その後の補助種目や同じ筋肉を使う種目で質の高いトレーニングが行えなくなる。

トレーニングボリュームを増やし、なるべく速いペースで向上しようとする場合は、非限界セット中心にトレーニングを続けた方が長期的にはトレーニングの質と量を増やせてよりよい結果を出せると思う。

競技の補助としてレジスタンストレーニングを行う場合は、限界までやると疲労が大きすぎて専門のトレーニングに支障が出るだろう。トレーニングスケジュールとの兼ね合いもあるけど、限界までやらない方が良いだろう。

実践を考えると、今回の研究のように10RMの重量で5レップだと追い込み度がやや低いかもしれない。このレップ数なら出来るだけ速く挙上するパワートレーニングが推奨される。筋肥大トレーニングでボリュームを積みたい場合は、限界まで1-4レップ残し程度、例えば10RMの重量だったら6-9レップ程度が良いと思う。


関連記事
各セット限界まで追い込むべきか

フレキシブルなトレーニングプログラムの組み立て方

筋肥大のメカニズム

11/30/2017

主働筋-拮抗筋のペアードセット

主働筋-拮抗筋ペアードセット(paired set)と通常セット(traditional set)を比較した研究を調べてみました。

主働筋-拮抗筋ペアードセットは例えば、ベンチプレス1セット目→ロウイング1セット目→ベンチプレス2セット目→ロウイング2セット目→ベンチプレス3セット目→ロウイング3セット目 といった感じで主働筋-拮抗筋が入れ替わる種目を交互に行うトレーニング方法。

通常セットは例えば、ベンチプレス1セット目→ベンチプレス2セット目→ベンチプレス3セット目→ロウイング1セット目→ロウイング2セット目→ロウイング3セット目 という順番で行うトレーニング方法。

研究ではペアードセットと通常セットについて以下のようなポイントを比較している。
・1回のトレーニングにかかる時間
・各セット限界までやった場合のトレーニングボリューム(重量×レップ数)
・疲労度合い(主にEMGを測定しているけどブレが大きく参考程度にしかならないのでこの記事では割愛)
・長期的に続けた場合のストレングスとパワーの伸び



★ペアードセットの研究
いずれの研究も被験者はトレーニング歴のある若い男性で体格が良い。大学の運動選手の模様。

(1)Volume Load and Neuromuscular Fatigue During an Acute Bout of Agonist-Antagonist Paired-Set vs. Traditional-Set Training.
https://www.researchgate.net/publication/279164429_Volume_Load_and_Neuromuscular_Fatigue_During_an_Acute_Bout_of_Agonist-antagonist_Paired-set_Versus_Traditional-set_Training

・トレーニング種目:
1種目目:ベンチプレス
2種目目:シーテッドロウ

・重量と追い込み度:10RMの重量で限界まで各種目3セット

・比較ポイント:各セット限界までやった場合のトレーニングボリューム

・セット間インターバル
a) ペアードセット
同一種目の実質インターバルは約170秒
ベンチプレス1セット目(約40秒)→(移動約10秒)→ロウ1セット目(約40秒)→(インターバル2分)→ベンチプレス2セット目→以下両種目3セット終わるまで続く

b) 通常セット
インターバルは2分
ベンチプレス1セット目→(インターバル2分)→ベンチプレス2セット目→以下両種目3セット終わるまで続く

・ウォームアップ含めてトレーニングにかかった時間
通常セットが16分、ペアードセットが8.5分

<結果>
ペアードセットの方がトレーニングボリューム(重量×レップ数)が多くなった。おそらく同一種目の実質インターバルが長いため、主働筋がより回復できたからだと思われる。

面白いのが、2種目目の1セット目(ロウ1セット目)もペアードセットの方が通常セットよりもレップ数が多くなったこと。(2)の研究でも示されているが、ペアードセットで1種目目と2種目目のインターバルが短いと、2種目目のトレーニングボリュームが増えるようだ。


(2)Effects of different rest intervals between antagonist paired sets on repetition
performance and muscle activation.
https://pdfs.semanticscholar.org/f7df/05325e8fcbcaa14d7a9fd79be50508ba6fb0.pdf

・重量と追い込み度:10RMの重量で限界まで

種目:ニーエクステンションとニーフレクション(ライイングレッグカール)

比較ポイント:ニーエクステンションを10RMの重量で何レップ出来るか

a) ニーエクステンションのみを限界まで1セット(TP)
b) ニーフレクション1セットの直後(移動に約15秒)にニーエクステンションを限界まで1セット(PMR)
c) ニーフレクション1セットの30秒後にニーエクステンションを限界まで1セット(P30)
d) ニーフレクション1セットの1分後にニーエクステンションを限界まで1セット(P1)
e) ニーフレクション1セットの3分後にニーエクステンションを限界まで1セット(P3)
f) ニーフレクション1セットの5分後にニーエクステンションを限界まで1セット(P5)

<結果>
b,c,dの順で、ニーエクステンションのレップ数は多かった。つまりニーフレクションからニーエクステンションまでの休憩時間が短いほど、ニーエクステンションのレップ数が多くなった。3分以上の休憩だと、ニーフレクション無しの場合と有意差なし。


(3)Exercise order affects the total training volume and the ratings of perceived exertion in response to a super-set resistance training session
https://www.researchgate.net/publication/221867808_Exercise_order_affects_the_total_training_volume_and_the_ratings_of_perceived_exertion_in_response_to_a_super-set_resistance_training_session

ペアードセットで種目の実施順序を変えた場合のボリューム測定

a) 1種目目レッグエクステンション→2種目目レッグカール(QH)
b) 1種目目レッグカール→2種目目レッグエクステンション(HQ)

・比較ポイント:各セット限界までやった場合のトレーニングボリューム

<結果>
1種目目レッグカールの方がトータルのトレーニングボリュームが多くなった。主働筋-拮抗筋の組み合わせによっては、どちらを先に行うかでトレーニングボリュームに違いが出ることがあるようだ。


(4)The effect of an upperbody agonist-antagonist resistance training protocol on volume load
and efficiency.
https://www.researchgate.net/publication/46288879_The_Effect_of_an_Upper-Body_Agonist-Antagonist_Resistance_Training_Protocol_on_Volume_Load_and_Efficiency

・トレーニング種目:
1種目目:ベンチプル
2種目目:ベンチプレス

・重量と追い込み度:4RMの重量で限界まで各種目3セット

・比較ポイント:各セット限界までやった場合のトレーニングボリューム

・セット間インターバル
a) ペアードセット
インターバル2分。同一種目のインターバルは4分。
b) 通常セット
インターバル2分。

・トレーニング終了までの時間は両方とも同じ。(合計6セットを2分インターバルで行う)

<結果>
ペアードセットの方がトレーニングボリュームが大きくなった。同一種目のインターバルが大幅に違うので当然の結果。

(5)Physical performance and electromyographic
responses to an acute bout of paired set strength training versus
traditional strength training.
http://www.academia.edu/14519745/Physical_Performance_and_Electromyographic_Responses_to_an_Acute_Bout_of_Paired_Set_Strength_Training_Versus_Traditional_Strength_Training

・トレーニング種目:
1種目目:ベンチプル
2種目目:ベンチプレス

・重量と追い込み度:4RMの重量で限界まで各種目3セット

・比較ポイント:各セット限界までやった場合のトレーニングボリューム

・セット間インターバル
a) ペアードセット
インターバル2分。同一種目のインターバルは4分。
b) 通常セット
インターバル4分

<結果>
トータルボリュームはペアードセットと通常セットで有意差なし。効果量を見ると通常セットの方がごくわずかに上。


(6)Effects of agonist-antagonist complex resistance training on upper body
strength and power development.
https://www.researchgate.net/publication/40454501_Effects_of_agonist-antagonist_complex_training_on_upper_body_strength_and_power_development

これのみ長期の研究で、8週間のトレーニングを行っている。

・トレーニング種目
1種目目:ベンチプル
2種目目:ベンチプレス&ベンチプレススロー

重量:3-6RM

トレーニング頻度・ボリューム:部位あたり合計18–25レップを週2回。実際にどれくらいボリュームをこなせたかは書かれていない。

・セット間インターバル
a) ペアードセット
インターバル2分。同一種目のインターバルは4分。
b) 通常セット
インターバル4分

<結果>
ベンチプルとベンチプレスの1RMは、ペアードセットのみトレーニング前→後の伸びが有意差あり。通常セットも1RMは伸びてはいるけど有意差はなし。

被験者数が少なく、ベンチプレス100kgくらい挙がる人にとってはトレーニングボリュームが少なく、実験期間が短いので、有意差の有無は偶然ではないかと思う。トレーニング前後の1RM変化の効果量を見ると、ベンチプルはペアードセットの方が大きいけど、ベンチプレスは通常セットの方が大きい。

ペアードセットでトレーニング時間を約半分にしても、ストレングストレーニングの効果は通常セットと同じくらい出た、とこの研究からは言える。



★ペアードセットで2種目目のボリュームが増えるメカニズム
(1)(2)の研究では、ペアードセットで1種目目と2種目目のインターバルが短いと、2種目目の限界レップ数が増えることが示されている。

これについてのメカニズムは明確にはなっていないが、論文に書かれている推測メカニズムを書くと、

・拮抗筋を事前に疲れさせることで、主働筋のセットの際に拮抗筋がブレーキとして働く時間が短くなって、差し引きでの力の発揮が大きくなる。ただこれはバリスティックトレーニングで働くメカニズムなので、通常のレジスタンストレーニングではあまり関係がないかも。

・拮抗筋のセットで拮抗筋の腱紡錘と主働筋の筋紡錘を刺激することで、主働筋のセットの時に主働筋が収縮しやすくなると同時に拮抗筋が緩みやすくなり、差し引きで発揮する力が大きくなる。

注意点としては、拮抗筋は関節を安定させる働きがあるので、このようなメカニズムが働いていた場合、関節が不安定になり怪我リスクが上がるかもしれない。


★ペアードセットについてのコメント
トレーニングボリュームを維持しつつトレーニング時間を短縮できるのは明確なメリット。効率よくトレーニングを行うためには積極的に取り入れたいトレーニング方法だと思う。

1種目目と2種目目の間隔を短く(1分以内程度に)することで、2種目目のボリュームを増やせる可能性があるが、これはメリットなのか不明。ボリュームを増やすと次のトレーニングセッションまでの回復時間が長くなるので、長期的に見てトレーニングの質と量を増やせるのかわからない。

また関節の安定性が低下する可能性もある。保守的にやるなら、1種目目と2種目目の間隔は1分以上空けて、肘(アームカール-トライセップスエクステンション)や膝(レッグエクステンション-レッグカール)といった単関節種目でペアードセットを行うのが良いだろう。肩関節のような自由度の高い関節でのフリーウェイトでのコンパウンド種目は怪我のリスクが上がるかもしれない。コンパウンド種目をやるならスミスマシンなどを使った方が良いと思う。

ちなみに私はスミスマシンで、大胸筋のアイソレートを意識したインクラインベンチプレスと、身体を後ろに傾けてバーを掴んで身体を持ち上げるプル動作(Inverted Row)でペアードセットをやっています。

体幹やスタビライザーの役割が重要な種目でも、ペアードセットはフォームが崩れやすくやらないほうが良いだろう。スクワットやデッドリフト(何とペアにするのかわからないが)は不向き。心肺能力面でも困難だろう。

研究での被験者はすべて若いアスリートで、彼らはトレーニングをこなす体力があるし、回復力もあるだろう。自分がペアードセットをトレーニングに取り入れる時は、疲労の溜まり具合や怪我リスク(関節の違和感など)をよくチェックしながらやった方が良いと思う。

またトレーニングボリュームを測定した研究では各種目3セット程度しか行っていないので、セット数が多くなってくるとどうなるのかわからない。ペアードセットだと疲れてボリュームが低下したりフォームが崩れたりするかもしれない。その場合はインターバルを長くする必要があるだろう。


★細かいつっこみ
主働筋-拮抗筋のペアードセットというけれど、ベンチプレスは肩甲骨を寄せるから、ロウ系種目(シーテッドロウやベンチプル)の完全に対称的な動作ではない。腕立て伏せとロウ系だったら、だいたい対称的な動作になるけれど、それでも上腕三頭筋長頭は肘関節の伸展に加えて肩関節の伸展の働きがあるのでプッシュの動作とロウの動作の両方で使われる。