1/26/2018

タンパク質の種類と筋肥大

現在主流の考えだと、長期的な筋肥大に重要なのはタンパク質の種類や摂取タイミングよりも一日のトータルのタンパク質摂取量で、ある程度のタンパク質摂取量を確保すれば、それ以上摂取しても筋肥大は高まらない。

関連記事:ゴールデンタイムはあるのか?

最新研究だと、
(1) A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28698222
タンパク質摂取量1.62g/kg/dayを超えると、追加でプロテインサプリメントを摂取しても筋肥大がさらに促進されるわけではないという結果。


しかし、へえ~と思った研究があったので、タンパク質の種類による筋肥大への影響の違いをちょっと調べてみました。

★ホエイとサテライト細胞
実験期間中の筋肥大に違いがあるかどうかだけでなく、長期的な筋肥大の差につながる可能性のあるサテライト細胞の増加に違いがあるかどうか、という視点。

(2) Effects of Whey, Soy or Leucine Supplementation with 12 Weeks of Resistance Training on Strength, Body Composition, and Skeletal Muscle and Adipose Tissue Histological Attributes in College-Aged Males
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5622732/
若い男性が12週間のレジスタンストレーニングを実施。サプリメントの内容が異なる5グループに分けて、レジスタンストレーニングの効果に違いが出るか調べた研究。

サプリメントは、プラシーボ(マルトデキストリン)、ロイシン、ホエイプロテイン・コンセントレイト、ホエイプロテイン・ハイドロリセート、ソイプロテイン・コンセントレイト。

プラシーボ以外のサプリメントの摂取量は、ロイシン含有量約3gで揃えられている。1回あたりの摂取量は、ホエイがタンパク質含有量約25g、ソイがタンパク質含有量約39g。これを1日2回摂取。

プラシーボグループ含めて、グループ間ではストレングスの伸び、及び全身の筋肉量と筋繊維の断面積の変化に有意差は出なかった。プラシーボグループでも除脂肪体重を考慮するとタンパク質摂取量がそれなりに多かったことから、サプリメントでタンパク質をさらに摂取しても筋肥大に差が出なかったと考えられる。

しかしサテライト細胞の数については違いが出ていて、プラシーボとロイシンはサテライト細胞の数が有意差なしだったが、ホエイプロテイン摂取の2グループはサテライト細胞が増えた。ソイは有意差有りには達しなかったが増える傾向があった。プラシーボとロイシンに比べて、ホエイとソイのグループはトータルのタンパク質摂取量が多くなっているので、これが影響した可能性もある。ただトータルのタンパク質摂取量はソイが最も多いけど、サテライト細胞の増加はソイよりもホエイの方が優位になっているので、タンパク質摂取量以外のファクターがある感じもする。
 
サテライト細胞の増加は筋肥大ポテンシャルの向上を示唆していると考えられる。実験期間中の筋肥大に差がなくても、サテライト細胞の数に差が出ていれば、長期的には筋肥大に差がつくかもしれない。

サテライト細胞の働きについては以下を参考に

関連記事:筋肥大のメカニズム

ホエイとプラシーボでサテライト細胞の増加に違いが出るかどうかを調べた研究は他にもいくつかあって、部分的にホエイ優位の結果か、もしくは有意差は無いけど傾向としてはわずかにホエイ優位という結果が出ている。これらの研究もホエイの方がプラシーボよりもトータルのタンパク質摂取量が多いので、ホエイの効果によるものなのか、タンパク質摂取量の違いによるものなのか、はっきりしない面もある。

以下の2つの研究でのホエイの摂取量は1日約20g

(3) Influence of exercise contraction mode and protein supplementation on human skeletal muscle satellite cell content and muscle fiber growth.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4280155/

(4) Protein Supplementation Does Not Affect Myogenic Adaptations to Resistance Training.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28346813/
https://www.utmb.edu/pepper/publications/2017%20Pubs/PMC5433887.pdf

差は微妙なものだと思われるが、プラシーボよりもホエイの方が不利になることはなさそうなので、筋肥大の最大化を目指す場合はホエイプロテインを飲むのが良いと思う。除脂肪体重約60kgの若い男性が1日あたりタンパク質含有量約50gのホエイプロテインを摂取した(2)の研究が、サテライト細胞の数にもっとも差が出ているので、実践する場合はこの量が目安になるだろう。


★肉・魚と筋肥大
(5) Effects of an omnivorous diet compared with a lactoovovegetarian diet on resistance-training-induced changes in body composition and skeletal muscle in older men.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10584048
http://ajcn.nutrition.org/content/70/6/1032.long

高齢者(51–69歳)が12週間のレジスタンストレーニングを実施。食事内容が異なる2グループに分けて、レジスタンストレーニングの効果に違いが出るか調べた研究。
片方のグループは、卵と乳製品は食べても良いベジタリアン食(ラクト・オボ・ベジタリアン)。もう片方は、肉でもなんでも食べる通常の食事(ここでの肉は魚も含む)。
被験者は両グループとも、実験前の食事では肉も魚も食べている。

結果は、通常の食事グループの方が筋肥大で良い結果が出ている。除脂肪体重はラクト・オボ・ベジタリアンが-0.8kg、通常食が+1.7kg。脚から採取した筋繊維は、タイプ1が変化無しで、タイプ2が両グループとも太くなったが、通常食の方がより太くなった(通常食+16.2%、ラクト・オボ・ベジタリアン+7.3%)。ストレングスの伸びはグループ間で有意差なしだけど、通常食の方がより伸びた傾向。

食事内容による筋肥大効果の違いがどのような要因によるものか推測すると、

1) 摂取タンパク質の量と質の違い
ラクト・オボ・ベジタリアングループの方がタンパク質摂取量と動物性タンパクの割合が低いので、それが筋肥大に悪影響を与えている可能性がある。ただグループ間でそれほど大きな差では無いし、高齢者がレジスタンストレーニングを行った関連研究ではラクト・オボ・ベジタリアン食だとタンパク質摂取量が1.6g/体重kg/dayでも筋肥大しなかったとのことなので、摂取タンパク質の違いは筋肥大の差にほとんど影響を与えていないのではと考えられる。

2) 亜鉛不足の可能性
ベジタリアン食は亜鉛が不足しやすい。亜鉛が不足すると筋合成に悪影響が出るようだ。
(6) Effects of magnesium and zinc deficiencies on growth and protein synthesis in skeletal muscle and the heart.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1772873

3) クレアチン不足
ラクト・オボ・ベジタリアングループは、食物からのクレアチン摂取量がほぼゼロになるので、筋肥大に悪影響が出ている可能性がある。またクレアチンローディングの逆で、水分が抜けて除脂肪体重が減っているのかもしれない。

関連記事:クレアチンについて

4) テストステロンレベル
今回の研究では計測していないが、もしかしたらラクト・オボ・ベジタリアングループはテストステロンレベルが低下していて、それが筋肥大に悪影響を与えた可能性がある。
(7) Serum sex hormones and endurance performance after a lacto-ovo vegetarian and a mixed diet.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1435181?dopt=Abstract

要因ははっきりしないし、現時点の科学で解明できない要因もあるのかもしれないけど、筋肥大の差はくっきり出ているので、筋肥大を目指すには肉・魚は食べたほうが良いと思われる。ベジタリアン食にこだわる場合は、サプリメントで亜鉛とクレアチンを摂取すると良さそう。

ちなみに健康面を考えるなら、赤身肉ばかり食べず、タンパク質源は分散させた方が良いだろう。

関連記事:低炭水化物食とタンパク質源の健康への影響


★ソイと筋肉のダメージ
(8) Soy Beverage Consumption by Young Men
http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1300/J133v03n01_03?journalCode=ijds19

(9) Four Weeks of Supplementation With Isolated Soy Protein Attenuates Exercise-Induced Muscle Damage and Enhances Muscle Recovery in Well Trained Athletes: A Randomized Trial.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5098124/

ソイプロテインの継続的な摂取で、ソイのもつ抗酸化作用により筋肉のダメージが軽減されるという研究がある。筋トレによる筋肉へのダメージを減らせれば、短いスパンで次のトレーニングを行うことが出来、長期的に良い結果を得られると考えられる。ただ一般的な日本人の食生活は欧米に比べて大豆製品の摂取量が多いので、追加でソイプロテインを摂取しても研究のような効果がないかもしれない。


★まとめ
実践面では、ホエイプロテインを摂取、肉と魚を食べる、トータルのタンパク質摂取量は1.6-2.0g/kg/day程度(維持カロリー以上摂取)というのが筋肥大効果を高めるタンパク質の摂取の仕方だと思う。豆製品も食べておくとトレーニング効率を高められるかもしれない。

関連記事:タンパク質摂取量の目安

12/19/2017

限界まで追い込んだ場合と追い込まなかった場合の回復の違い

Time course of recovery following resistance training leading or not to failure.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28965198

各セット限界まで追い込んだ場合と、限界レップ数の半分で止めた場合の、トレーニング後72時間の疲労回復の経過を比較した研究。


★実験方法
種目はスミスマシンでのベンチプレスとスクワット

重量はすべて10RM(75%1RM)

以下の3パターンについてトレーニング後72時間までの回復の経過を比較している。

(1) 3セット×5レップ(非限界)
(2) 6セット×5レップ(非限界)
(3) 3セット×10レップ(限界)

(2)と(3)のパターンは、トレーニングボリュームを等しくしつつ、非限界と限界で疲労度合いがどう変わるかを調べている。

コンセントリックを全速力で挙上しているので、非限界パターンはパワートレーニングになっている。被験者はトレーニング歴あり。レジスタンストレーニングに慣れているので、普段トレーニングしている人の参考になる。


★疲労度合いの測定項目
血液検査
- アンモニア、テストステロン、コルチゾール、成長ホルモン
- クレアチンキナーゼ(筋肉のダメージの指標)

運動パフォーマンス
- カウンタームーブメントジャンプ(以下CMJ)
- ベンチプレスとスクワットの中重量での挙上速度(疲れていると挙上速度が低下する)


★結果
非限界パターンは3セットも6セットも、トレーニング直後のCMJが低下したのみで、ベンチプレスとスクワットの挙上速度はトレーニング直後も翌日以降もパフォーマンスが変わらず。

限界パターンは、スクワットとベンチプレスの挙上速度が24-48時間後まで低下、CMJは48時間後まで低下。またトレーニング直後のパフォーマンスの落ち込みが激しい。

クレアチンキナーゼを見ると、非限界6セットパターンはトレーニング48時間後にベースラインに戻ったのに対し、限界パターンは72時間後にベースラインに戻った。上昇の程度も限界パターンの方が大きく、トレーニングボリュームが同じでも限界まで追い込んだ方が筋肉のダメージが大きいことが示唆される。



☆コメント
トレーニングからの疲労回復にかかる時間は概ねボリューム依存で、例えば高強度・低レップトレーニング(8セット×3レップ)と高ボリュームトレーニング(8セット×10レップ)とでは、高ボリュームトレーニングの方が回復に時間がかかることがわかっている。

Comparison of the recovery response from high-intensity and high-volume resistance exercise in trained men.
https://www.researchgate.net/publication/315684978_Comparison_of_the_Recovery_Response_from_High_Intensity_and_High_Volume_Resistance_Exercise_in_Trained_Men

今回の研究は、トレーニングボリュームが同じでも、追い込み度が高いと回復に時間がかかることが明確に示されている点が新しい。

全セット限界までやった方が疲労が大きく回復に時間がかかることはわかった。では、トレーニングの効果はどうなのだろう。限界までやった方が筋肥大とストレングスの向上は大きくなるのだろうか。

一回のトレーニングセッションがもたらす効果を考えてみると・・・
筋肥大を促す刺激は大きく分けて、メカニカルテンション、代謝ストレス、筋肉へのダメージと言われている。ボリュームが等しい(メカニカルテンションが等しい)場合、限界までやった方が代謝ストレスと筋肉のダメージが大きくなるので、より強い刺激が筋肉に入ると考えられる。

長期的な視点を考えると・・・
例えば今回の研究のような「1部位あたり限界までを3セット」or「1部位あたり限界レップ数の半分を6セット」というトレーニングメニューを週2回ペースで続けていくなら、限界までやった方が筋肥大とストレングスの伸びは大きいと思う。このメニューだとトレーニングボリュームが小さいので、全セット限界までやっても身体が扱えるボリュームと疲労の限度まで余裕があるだろう。トレーニングにあまり時間が割けず、限られた時間でなるべく効果を得たい場合は、このようなボリュームの小さいトレーニングメニューを、セット間インターバルを長めに取りつつ全セット限界までやるのも良いと思う。

しかし例えば、「1部位あたり補助種目も含めて限界までを10セット」を週3回ペースで続けたりすると、おそらく身体のキャパシティを超えてしまう。限度を超えた疲労によりトレーニングの質が低下したり、ストレスレベルが高くなりアナボリックに不利な体内環境になったりして、トレーニング効果が低下する恐れがある。

またトレーニングセッション内での悪影響もある。限界まで追い込むとトレーニング直後のパフォーマンス低下が激しいので、スクワットやベンチプレスで全セット限界までやると、その後の補助種目や同じ筋肉を使う種目で質の高いトレーニングが行えなくなる。

トレーニングボリュームを増やし、なるべく速いペースで向上しようとする場合は、非限界セット中心にトレーニングを続けた方が長期的にはトレーニングの質と量を増やせてよりよい結果を出せると思う。

競技の補助としてレジスタンストレーニングを行う場合は、限界までやると疲労が大きすぎて専門のトレーニングに支障が出るだろう。トレーニングスケジュールとの兼ね合いもあるけど、限界までやらない方が良いだろう。

実践を考えると、今回の研究のように10RMの重量で5レップだと追い込み度がやや低いかもしれない。このレップ数なら出来るだけ速く挙上するパワートレーニングが推奨される。筋肥大トレーニングでボリュームを積みたい場合は、限界まで1-4レップ残し程度、例えば10RMの重量だったら6-9レップ程度が良いと思う。


関連記事
各セット限界まで追い込むべきか

フレキシブルなトレーニングプログラムの組み立て方

筋肥大のメカニズム

11/30/2017

主働筋-拮抗筋のペアードセット

主働筋-拮抗筋ペアードセット(paired set)と通常セット(traditional set)を比較した研究を調べてみました。

主働筋-拮抗筋ペアードセットは例えば、ベンチプレス1セット目→ロウイング1セット目→ベンチプレス2セット目→ロウイング2セット目→ベンチプレス3セット目→ロウイング3セット目 といった感じで主働筋-拮抗筋が入れ替わる種目を交互に行うトレーニング方法。

通常セットは例えば、ベンチプレス1セット目→ベンチプレス2セット目→ベンチプレス3セット目→ロウイング1セット目→ロウイング2セット目→ロウイング3セット目 という順番で行うトレーニング方法。

研究ではペアードセットと通常セットについて以下のようなポイントを比較している。
・1回のトレーニングにかかる時間
・各セット限界までやった場合のトレーニングボリューム(重量×レップ数)
・疲労度合い(主にEMGを測定しているけどブレが大きく参考程度にしかならないのでこの記事では割愛)
・長期的に続けた場合のストレングスとパワーの伸び



★ペアードセットの研究
いずれの研究も被験者はトレーニング歴のある若い男性で体格が良い。大学の運動選手の模様。

(1)Volume Load and Neuromuscular Fatigue During an Acute Bout of Agonist-Antagonist Paired-Set vs. Traditional-Set Training.
https://www.researchgate.net/publication/279164429_Volume_Load_and_Neuromuscular_Fatigue_During_an_Acute_Bout_of_Agonist-antagonist_Paired-set_Versus_Traditional-set_Training

・トレーニング種目:
1種目目:ベンチプレス
2種目目:シーテッドロウ

・重量と追い込み度:10RMの重量で限界まで各種目3セット

・比較ポイント:各セット限界までやった場合のトレーニングボリューム

・セット間インターバル
a) ペアードセット
同一種目の実質インターバルは約170秒
ベンチプレス1セット目(約40秒)→(移動約10秒)→ロウ1セット目(約40秒)→(インターバル2分)→ベンチプレス2セット目→以下両種目3セット終わるまで続く

b) 通常セット
インターバルは2分
ベンチプレス1セット目→(インターバル2分)→ベンチプレス2セット目→以下両種目3セット終わるまで続く

・ウォームアップ含めてトレーニングにかかった時間
通常セットが16分、ペアードセットが8.5分

<結果>
ペアードセットの方がトレーニングボリューム(重量×レップ数)が多くなった。おそらく同一種目の実質インターバルが長いため、主働筋がより回復できたからだと思われる。

面白いのが、2種目目の1セット目(ロウ1セット目)もペアードセットの方が通常セットよりもレップ数が多くなったこと。(2)の研究でも示されているが、ペアードセットで1種目目と2種目目のインターバルが短いと、2種目目のトレーニングボリュームが増えるようだ。


(2)Effects of different rest intervals between antagonist paired sets on repetition
performance and muscle activation.
https://pdfs.semanticscholar.org/f7df/05325e8fcbcaa14d7a9fd79be50508ba6fb0.pdf

・重量と追い込み度:10RMの重量で限界まで

種目:ニーエクステンションとニーフレクション(ライイングレッグカール)

比較ポイント:ニーエクステンションを10RMの重量で何レップ出来るか

a) ニーエクステンションのみを限界まで1セット(TP)
b) ニーフレクション1セットの直後(移動に約15秒)にニーエクステンションを限界まで1セット(PMR)
c) ニーフレクション1セットの30秒後にニーエクステンションを限界まで1セット(P30)
d) ニーフレクション1セットの1分後にニーエクステンションを限界まで1セット(P1)
e) ニーフレクション1セットの3分後にニーエクステンションを限界まで1セット(P3)
f) ニーフレクション1セットの5分後にニーエクステンションを限界まで1セット(P5)

<結果>
b,c,dの順で、ニーエクステンションのレップ数は多かった。つまりニーフレクションからニーエクステンションまでの休憩時間が短いほど、ニーエクステンションのレップ数が多くなった。3分以上の休憩だと、ニーフレクション無しの場合と有意差なし。


(3)Exercise order affects the total training volume and the ratings of perceived exertion in response to a super-set resistance training session
https://www.researchgate.net/publication/221867808_Exercise_order_affects_the_total_training_volume_and_the_ratings_of_perceived_exertion_in_response_to_a_super-set_resistance_training_session

ペアードセットで種目の実施順序を変えた場合のボリューム測定

a) 1種目目レッグエクステンション→2種目目レッグカール(QH)
b) 1種目目レッグカール→2種目目レッグエクステンション(HQ)

・比較ポイント:各セット限界までやった場合のトレーニングボリューム

<結果>
1種目目レッグカールの方がトータルのトレーニングボリュームが多くなった。主働筋-拮抗筋の組み合わせによっては、どちらを先に行うかでトレーニングボリュームに違いが出ることがあるようだ。


(4)The effect of an upperbody agonist-antagonist resistance training protocol on volume load
and efficiency.
https://www.researchgate.net/publication/46288879_The_Effect_of_an_Upper-Body_Agonist-Antagonist_Resistance_Training_Protocol_on_Volume_Load_and_Efficiency

・トレーニング種目:
1種目目:ベンチプル
2種目目:ベンチプレス

・重量と追い込み度:4RMの重量で限界まで各種目3セット

・比較ポイント:各セット限界までやった場合のトレーニングボリューム

・セット間インターバル
a) ペアードセット
インターバル2分。同一種目のインターバルは4分。
b) 通常セット
インターバル2分。

・トレーニング終了までの時間は両方とも同じ。(合計6セットを2分インターバルで行う)

<結果>
ペアードセットの方がトレーニングボリュームが大きくなった。同一種目のインターバルが大幅に違うので当然の結果。

(5)Physical performance and electromyographic
responses to an acute bout of paired set strength training versus
traditional strength training.
http://www.academia.edu/14519745/Physical_Performance_and_Electromyographic_Responses_to_an_Acute_Bout_of_Paired_Set_Strength_Training_Versus_Traditional_Strength_Training

・トレーニング種目:
1種目目:ベンチプル
2種目目:ベンチプレス

・重量と追い込み度:4RMの重量で限界まで各種目3セット

・比較ポイント:各セット限界までやった場合のトレーニングボリューム

・セット間インターバル
a) ペアードセット
インターバル2分。同一種目のインターバルは4分。
b) 通常セット
インターバル4分

<結果>
トータルボリュームはペアードセットと通常セットで有意差なし。効果量を見ると通常セットの方がごくわずかに上。


(6)Effects of agonist-antagonist complex resistance training on upper body
strength and power development.
https://www.researchgate.net/publication/40454501_Effects_of_agonist-antagonist_complex_training_on_upper_body_strength_and_power_development

これのみ長期の研究で、8週間のトレーニングを行っている。

・トレーニング種目
1種目目:ベンチプル
2種目目:ベンチプレス&ベンチプレススロー

重量:3-6RM

トレーニング頻度・ボリューム:部位あたり合計18–25レップを週2回。実際にどれくらいボリュームをこなせたかは書かれていない。

・セット間インターバル
a) ペアードセット
インターバル2分。同一種目のインターバルは4分。
b) 通常セット
インターバル4分

<結果>
ベンチプルとベンチプレスの1RMは、ペアードセットのみトレーニング前→後の伸びが有意差あり。通常セットも1RMは伸びてはいるけど有意差はなし。

被験者数が少なく、ベンチプレス100kgくらい挙がる人にとってはトレーニングボリュームが少なく、実験期間が短いので、有意差の有無は偶然ではないかと思う。トレーニング前後の1RM変化の効果量を見ると、ベンチプルはペアードセットの方が大きいけど、ベンチプレスは通常セットの方が大きい。

ペアードセットでトレーニング時間を約半分にしても、ストレングストレーニングの効果は通常セットと同じくらい出た、とこの研究からは言える。



★ペアードセットで2種目目のボリュームが増えるメカニズム
(1)(2)の研究では、ペアードセットで1種目目と2種目目のインターバルが短いと、2種目目の限界レップ数が増えることが示されている。

これについてのメカニズムは明確にはなっていないが、論文に書かれている推測メカニズムを書くと、

・拮抗筋を事前に疲れさせることで、主働筋のセットの際に拮抗筋がブレーキとして働く時間が短くなって、差し引きでの力の発揮が大きくなる。ただこれはバリスティックトレーニングで働くメカニズムなので、通常のレジスタンストレーニングではあまり関係がないかも。

・拮抗筋のセットで拮抗筋の腱紡錘と主働筋の筋紡錘を刺激することで、主働筋のセットの時に主働筋が収縮しやすくなると同時に拮抗筋が緩みやすくなり、差し引きで発揮する力が大きくなる。

注意点としては、拮抗筋は関節を安定させる働きがあるので、このようなメカニズムが働いていた場合、関節が不安定になり怪我リスクが上がるかもしれない。


★ペアードセットについてのコメント
トレーニングボリュームを維持しつつトレーニング時間を短縮できるのは明確なメリット。効率よくトレーニングを行うためには積極的に取り入れたいトレーニング方法だと思う。

1種目目と2種目目の間隔を短く(1分以内程度に)することで、2種目目のボリュームを増やせる可能性があるが、これはメリットなのか不明。ボリュームを増やすと次のトレーニングセッションまでの回復時間が長くなるので、長期的に見てトレーニングの質と量を増やせるのかわからない。

また関節の安定性が低下する可能性もある。保守的にやるなら、1種目目と2種目目の間隔は1分以上空けて、肘(アームカール-トライセップスエクステンション)や膝(レッグエクステンション-レッグカール)といった単関節種目でペアードセットを行うのが良いだろう。肩関節のような自由度の高い関節でのフリーウェイトでのコンパウンド種目は怪我のリスクが上がるかもしれない。コンパウンド種目をやるならスミスマシンなどを使った方が良いと思う。

ちなみに私はスミスマシンで、大胸筋のアイソレートを意識したインクラインベンチプレスと、身体を後ろに傾けてバーを掴んで身体を持ち上げるプル動作(Inverted Row)でペアードセットをやっています。

体幹やスタビライザーの役割が重要な種目でも、ペアードセットはフォームが崩れやすくやらないほうが良いだろう。スクワットやデッドリフト(何とペアにするのかわからないが)は不向き。心肺能力面でも困難だろう。

研究での被験者はすべて若いアスリートで、彼らはトレーニングをこなす体力があるし、回復力もあるだろう。自分がペアードセットをトレーニングに取り入れる時は、疲労の溜まり具合や怪我リスク(関節の違和感など)をよくチェックしながらやった方が良いと思う。

またトレーニングボリュームを測定した研究では各種目3セット程度しか行っていないので、セット数が多くなってくるとどうなるのかわからない。ペアードセットだと疲れてボリュームが低下したりフォームが崩れたりするかもしれない。その場合はインターバルを長くする必要があるだろう。


★細かいつっこみ
主働筋-拮抗筋のペアードセットというけれど、ベンチプレスは肩甲骨を寄せるから、ロウ系種目(シーテッドロウやベンチプル)の完全に対称的な動作ではない。腕立て伏せとロウ系だったら、だいたい対称的な動作になるけれど、それでも上腕三頭筋長頭は肘関節の伸展に加えて肩関節の伸展の働きがあるのでプッシュの動作とロウの動作の両方で使われる。

10/25/2017

夜食べると太るのか

この手の話は、食べる時間帯や食事回数は関係なく、結局はカロリー収支の問題で決着がついているという認識だったけど、Examine.coの記事を読んでみて、意外と奥が深いな・・・と思ったので、夜く食べると太るのかという問題を扱った研究を調べてみた。


★研究の種類と問題点
研究は大きく分けて、観察研究と介入研究に分けられる。詳しくは、Wikipediaを参考に。

a) 観察研究
たくさんの人のデータを集めて、どんな生活習慣の人がどんな病気にかかりやすかったりするかを調べる。

{観察研究の問題点]
単なる偶然で相関関係が出来ている可能性、因果関係があるとして原因と結果はどちらなのか、研究者側の調査対象集団を選ぶバイアス、被験者の記憶や申告のバイアス(どんなものをどれくらい食べたかの自己申告は非常に不正確)、交絡因子の存在、etc。


b) 介入研究
被験者を集めて調べたい要因のみ変化させ、後は条件を揃えて、その要因の変化がどのように結果に影響を及ぼすか調べる。

[介入研究の問題点]
費用面や倫理面の制約があり、被験者数が少なく期間が短い。



★実際の研究
a) 観察研究
観察研究は探せばいくらでも出てくるだろうから割愛。よく一般メディアで「夜食べると太る」説の根拠として持ち出されるのがこの種類の研究。この手の研究はたくさんあると思うけど、個人的にはあまり興味が無いのでアブストラクト以外は読んでいない。

例えば以下のような背景で、観察研究では「夜食べる人は太りやすい」という結果が出ている可能性がある。
- 夜食べると太りやすいというのが世界共通の認識なので、体型への意識が高い人は夜にあまり食べないようにしていて、そういった人はカロリー摂取に気を使っているのでトータルの摂取カロリーが抑えられていて太りにくい。
- 多くの人は朝はゆっくり食べる時間がない。朝しっかり食べて、夜は食べないルールでやると、朝はしっかり食べようとしても、時間の問題でたくさん食べられない。結果としてトータルの摂取カロリーが抑えられて太りにくい。
- 多くの人は夜は比較的ゆっくり食べる時間があるので、たくさん食べてしまう。また夜は朝に比べて疲れているので、自己抑制が効かなくなり暴食しやすい。結果としてトータルの摂取カロリーが増えて太る。
- 夜の食事ではお酒を楽しむことも多い。お酒には食欲増進効果があるし、お酒自体にもカロリーがあるのでトータルの摂取カロリーが多くなる。


b) 介入研究
食べる時間帯の違いによる体重への影響を調べた介入研究には、主に2種類ある。実験所に閉じ込めて完全に食事管理する方法と、食事内容を細かく指示して自己管理する方法。合わせて5つの研究が見つかった。いずれも摂取カロリーを維持カロリー以下にしたダイエットの研究。

(b-1) 実験所に閉じ込めて完全に食事管理
エビデンスとしての質が高いのはこのやり方。この方法の研究は2つ見つかった(もし他に同様の研究があれば教えてもらえると有り難いです)。

ただこの種類の研究でも、どちらのグループに痩せやすい人が多くいるか、体組成の測定精度はどうなのか、被験者数の少なさや期間の短さといった問題点がある。

(1)Weight loss is greater with consumption of large morning meals and fat-free mass is preserved with large evening meals in women on a controlled weight reduction regimen.
http://jn.nutrition.org/content/127/1/75.long
1997年の論文
被験者:10人の肥満の女性
実験環境:実験室に閉じ込め。食事はカロリー計算されたものが提供され、それのみを食べる。
実験期間:3週間は体重維持でその後12週間のダイエット実験。
 最初の6週間 -> グループAは一日の総摂取カロリーの70%を午前に摂取、グループBは一日の総摂取カロリーの70%を午後に摂取。
 次の6週間 -> グループAは一日の総摂取カロリーの70%を午後に摂取、グループBは一日の総摂取カロリーの70%を午前に摂取。
食事のカロリー配分:
 午前パターン -> 8時から8時半に35%、11時半から12時に35%、16時半から17時に15%、20時から20時半に15%
 午後パターン -> 8時から8時半に15%、11時半から12時に15%、16時半から17時に35%、20時から20時半に35%
摂取カロリー:1日約1900kcal
マクロ栄養素バランス:炭水化物59.7%、タンパク質18.1%、脂質22.3%
運動:研究者側の指導のもとで、ウォーキング、有酸素運動、ウェイトトレーニングを実施。
体組成測定方法:生体インピーダンス式。
安静時代謝:間接熱量計で測定

[結果]
グループAとグループBを合わせた数字を見ると、午前パターンの方が体重は減った。午前パターンが-3.90kg、午後パターンが-3.27kg。ただ午前パターンは除脂肪体重の減少が午後パターンよりも大きく、体脂肪の減少量は午後パターンよりも小さい。午前パターンは除脂肪体重が大きく減り、体脂肪はあまり減らない質の悪いダイエットという結果になった。午前午後の食事パターンで安静時代謝に有意差無し。

私のコメント:
- 夜から翌朝の食事まで12時間空くので、その前の夕食でたくさん食べることで空腹時の筋肉の分解が抑えられ、午後パターンの方が除脂肪体重の減少が小さくなった可能性がある。
- 体重と体組成の測定タイミングが朝食前なので、午後パターンは午前パターンに比べてグリコーゲンと水分が多い状態で測定し、それが除脂肪体重と体重の変化の差に影響を与えている可能性がある。体重と除脂肪体重の推移(fig1)を見ると、両グループとも午前パターン開始後の2週目にガクンと落ちている。
- 少しの差だがグループBの方が体重が重く体脂肪率が高く安静時代謝が高い。つまりグループBの方がダイエットを始めると楽に痩せられると考えられる。またダイエットは続けるにつれ痩せにくくなるので、最初の6週間の方が次の6週間よりも楽に痩せられると考えられる。痩せやすいグループBが、痩せやすい最初の6週間に午後パターンになり、午後パターンはここで体脂肪減少の数字を稼いだ可能性がある(table4の赤丸がグループB)。次の6週間(Period2)ではグループBが午前パターンになり、午前パターンの方が体脂肪量がより多く減った。


(2)Influence of meal time on salivary circadian cortisol rhythms and weight loss in obese women.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17483007
http://www.nutritionjrnl.com/article/S0899-9007(07)00028-7/fulltext
2007年の論文
被験者:12人の肥満の女性
実験環境:病院に閉じ込め。食事はカロリー計算されたものが提供され、それのみを食べる。3回の実験の間のウォッシュアウト期間は家に帰って自由に食事。
実験期間:18日×3回 ウォッシュアウト5日×2回 
食事パターン(同じ被験者群を使って3回実験):
 ステージ1 -> 9時~20時の間に5回に分散させて食事
 ステージ2 -> 9時~11時の間にすべての食事を済ませる
 ステージ3 -> 18時~20時の間にすべての食事を済ませる
摂取カロリー:1-3日は2500kcal/dayを提供(食べたのは平均2100kcalくらい)、3-18日は900-1000kcal/day
マクロ栄養素バランス:炭水化物55%、タンパク質15%、脂質30%
運動:特になし
体組成測定方法:生体インピーダンス式
安静時代謝:間接熱量計で測定

[結果]
体重、体脂肪量、ウェスト、ヒップ、安静時代謝は、ステージ1,2,3で変化に差は無し。ウォッシュアウト中に体重が全部戻っているので、ステージ2,3もスタート時は同じ条件になっている。
コルチゾールの概日リズムも測定していて、食事時間によって変化なし。

私のコメント:
かなり極端な食事パターンだけど、食事を完全に管理すれば、いつ食べても結局はカロリー収支の問題という結果に。

 
(b-2) 食事内容を細かく指示して自己管理
この方法の研究は、指示された食事内容を守れていない可能性が高い。あと実験室に閉じ込めるのと同じく、グループに痩せやすい人が多くいるか、体組成の測定精度はどうなのかという問題点もある。

(3)High caloric intake at breakfast vs. dinner differentially influences weight loss of overweight and obese women.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23512957
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/oby.20460/pdf
2013年の論文
被験者:74人の肥満の女性
実験期間:12週間
食事パターン
朝食は6時から9時の間、昼食は12時から15時の間、夕食は18時から21時の間
 朝食多いグループ(38人) -> 朝食700kcal、昼食500kcal、夕食200kcal
 夕食多いグループ(36人) -> 朝食200kcal、昼食500kcal、夕食700kcal
摂取カロリー:1400kcal/day 栄養士の指導の下、自己管理。
マクロ栄養素バランス:炭水化物32%、タンパク質41%、脂質27%
運動:特になし

[結果]
12週間で朝食多いグループは体重8.7kg減少、夕食多いグループは3.6kg減少。ウェストサイズの減少も朝食多いグループの方が大きい。

私のコメント:
消費カロリーが2000kcalだとすると、カロリー赤字が600kcal/day。12週間で43200kcal。体重5,6kgは減るはず。さらに夕食多いグループは8週間以降で体重が増えている。体重80kgで消費カロリーが1400kcalを下回るとは考えにくい。指導された食事内容を守れていないと考えられる。

この研究では、「食事指導を受けた肥満の女性が自己管理で食事を用意するダイエットを行ったら、朝にカロリーを集中して食べた方が夜に集中して食べるよりも痩せやすかった」という結果になっている。


(4)Beneficial effect of high energy intake at lunch rather than dinner on
weight loss in healthy obese women in a weight-loss program:
https://www.researchgate.net/publication/307549097_Beneficial_effect_of_high_energy_intake_at_lunch_rather_than_dinner_on_weight_loss_in_healthy_obese_women_in_a_weight-loss_program_A_randomized_clinical_trial
2016年の論文
被験者:69人の肥満の女性
実験期間:12週間
食事のカロリー配分:
 昼食メイン -> 朝食15%、軽食15%、昼食50%、夕食20%
 夕食メイン -> 朝食15%、軽食15%、昼食20%、夕食50%
摂取カロリー:1900-2000kcal(自己申告)。栄養士の指導の下、自己管理。
マクロ栄養素バランス:炭水化物60%、タンパク質17%、脂質23%
運動:ほどほどの運動(主に早歩き)を60分週5日行うよう指導

[結果]
昼食メイングループの方が体重減少が大きかった。昼食メイングループが体重5.35kg減少、夕食メイングループが体重4.35kg減少。

私のコメント:
この研究では、「食事指導を受けた肥満の女性が自己管理で食事を用意するダイエットを行ったら、昼にカロリーを集中して食べた方が夜に集中して食べるよりも痩せやすかった」という結果になっている。


(5)Greater Weight Loss and Hormonal Changes After 6 Months Diet With Carbohydrates Eaten Mostly at Dinner
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1038/oby.2011.48/full
2011年の論文
以下の記事で取り上げた研究。

参考記事:ダイエットでは夜に炭水化物を集中的に食べよう

夜に炭水化物を多く食べるグループの方が体重がより減少し、除脂肪体重の減少も抑えられたという結果だが、スタート時点の体重と体脂肪率に差があって、夜に炭水化物を多く食べるグループの方が体重が重く体脂肪率が高く、痩せるのが容易だった可能性がある。また指示された摂取カロリーからすると体重減少が緩やかなので、食事内容を守れていないと考えられる。

この研究では、「食事指導を受けた肥満の男女が自己管理で食事を用意するダイエットを行ったら、朝昼晩バランス良く食べるよりも夜に炭水化物を集中して食べた方が痩せやすかった」という結果になっている。



★研究結果のまとめ
被験者を実験所に閉じ込め、研究者側が食事を用意し、摂取カロリーを厳格にコントロールした研究(1)(2)では、
(1)午前に多く食べたほうが体重減少は大きかったが、午後に多く食べたほうが体脂肪量の減少は大きく除脂肪体重の減少は小さかった。
(2)朝に集中して食べても夜に集中して食べても一日に分散させて食べても、体重や体脂肪量の変化に差はなかった。

栄養士の指導のもと、自己管理で食事を用意する研究(3)(4)(5)では、結果がまちまちで、
(3)朝にたくさん食べたほうが体重が減る。
(4)昼にたくさん食べたほうが体重が減る。
(5)夜にたくさん食べたほうが体重が減る。

摂取カロリーを厳格にコントロールした研究でも、測定タイミングや測定精度の問題、グループ分けの問題があるので、断言はなかなか出来ないのだけど、生理学的には摂取カロリーが同じならたぶんいつ食べようと変わらなくて、体重変動はカロリー収支の問題だろう。

ただダイエットの質についていえば、(1)と(5)の研究から、ダイエットでは夜に多く食べたほうが除脂肪体重の減少を抑えられ、質の良いダイエットを行える可能性がある。

留意点としては、体組成の測定は生体インピーダンス式で行われてて、精度はあまり良くないこと。ただ生体インピーダンス式でも、測定条件を一定にすれば相対的な変化は比較的正確に測定できると思われる。



★夜食べると太るのか
おそらく生理学的には、維持カロリー以上食べているなら結局はカロリー収支の問題で、どの時間帯に食べようと体重と体組成の変化に違いは出ない。夕食は寝る3時間前までに済ませないと脂肪として溜め込む、といった話は間違いだろう。

参考記事:栄養素の貯蔵と引き出し

ただ、ストレスの強い状況、例えば毎日午前2時に食べてその後寝るなど通常の生活サイクルから大きくズレた生活や、昼勤と夜勤が入り乱れるシフト勤務などでは、内分泌系の乱れなどにより消費カロリーが減少したり、維持カロリーの食事でも体脂肪が増えて除脂肪体重が減るといったことも考えられる。20時や21時に夕食を食べて0時までに寝るといった程度なら問題ないだろう。

カロリー不足の状況(ダイエット)だと、夕食に多く食べたほうが除脂肪体重を維持しやすいかもしれない。通常の生活サイクルだと夕食から翌朝の朝食までの時間間隔が大きく、肝グリコーゲンが枯渇し糖新生が増えることで筋肉が分解されやすくなる。夕食で炭水化物とタンパク質を多めに食べると良いだろう。また除脂肪体重の維持を目指す場合は、タンパク質摂取量を確保することも重要。

参考記事:タンパク質摂取量の目安

夜しっかり食べると実生活でどうなりやすいかは、人による。夜ダラダラ食べる傾向がある、夜疲れていて暴飲暴食する傾向がある人は、夜に何の制約もなく食べると摂取カロリーが多くなって太るだろう。その場合は、夕食の量をあらかじめ決めてそれ以外は食べない、夕食後の夜食は食べない、お菓子やインスタント食品などすぐ食べられる余計な食べ物を家に置かないなどのルールを設けるのが良いと思われる。

セルフコントロールが出来る人は、自分の体質と生活スタイルに合ったやり方でやれば良いだろう。



★夜食べると概日リズムが狂う説
夜食べることのデメリットとして、概日リズムが狂うという説があって、夜食症候群という症状が挙げられることがある。

夜食症候群の基準は、一日の総摂取カロリーの25%以上を夕食後の夜食で食べる and/or 週に2回以上夜中に起き出して食べる、とのこと。

少ししか調べていないけど、夜食症候群の人は、概日リズムが狂って夜食をするのか、夜食で概日リズムが狂うのか、ストレスや睡眠不足などが原因で概日リズムの狂いと夜食行動が起きるのか、因果関係がよくわからない。午前2時とかに食べ続ければ狂うだろうけど、そもそもその時間に活動している時点で概日リズムが狂っているだろう。食事パターンよりも環境の明暗のサイクルのほうが概日リズムへの影響が強いと考えられ、強い光を照射する治療で夜食症候群が治るケースもあるみたいなので、その場合は概日リズムが先に狂ってると考えられる。

個人差もあるだろうから夜しっかり食べると体調が悪くなる場合は、当然止めたほうが良い。夜食べないのが辛いのに、俗説を信じて無理に夜食べないようにするのは無駄な努力だし、余計なストレスが増える。



★今後の研究と議論
現時点では、食事を厳格にコントロールした研究は、食べる時間帯によって体重変動に影響が出ることを示していない。摂取したカロリーは魔法のように消えたり増えたりはしない。もし摂取カロリーが同じでも痩せたり太ったりするのなら、食べる時間帯によって消費カロリーが増減したり、カロリーの振り分けが変化したりする必要がある。従って、食べる時間帯により体重や体組成が変わることを証明したいのなら、例えば以下のような研究を行うと良いだろう。

ⅰ) 食べる時間帯で人間の24時間トータルの消費カロリーが変化することを示す。例えば、実験室に閉じ込めて24時間の呼気と尿を採取して消費カロリーを算出する。食事パターンを変えることでこの24時間の消費カロリーが変化するか調べる。

ⅱ) 食べる時間帯で人間のカロリーの振り分け(摂取したカロリーが除脂肪体重にいくか体脂肪にいくか)が変化することを示す。大勢の被験者を実験室に閉じ込めて食事を完全に管理した実験を数ヶ月間といった長期間行い、体組成変化が大きく出るようにして、精度の高い方法で体組成を測定する。また測定前には食事パターンを揃えて、測定時点でのグリコーゲンと水分の違いの影響が出ないようにする。

このような研究を何度も行い質の高いエビデンスを積み上げることが必要だろう。観察研究や食事を自己管理の介入研究やマウス実験はほとんど参考にならない。

9/29/2017

筋肥大トレの推奨ボリューム2

金(キン)曜日の29(ニク)日は「筋肉を考える日」らしいので、筋肉のことを考えてみましょう。


以前の記事(筋肥大トレの推奨ボリューム)のアップデート的な記事になります。筋肥大を目的としたトレーニングの場合、どのくらいのトレーニングボリュームが適切なのか。


★トレーニング未経験者・初心者の推奨ボリューム
今回見ていく研究はSchoenfeld他の研究で、週間のセット数と筋肥大の関係を調べた2016年のシステマティックレビュー・メタアナリシス研究になる。トレーニングボリュームと筋肥大の関係について、現状の研究結果からは何がわかるのか。

(1)Dose-response relationship between weekly resistance training volume and increases in muscle mass: A systematic review and meta-analysis
https://www.researchgate.net/publication/305455324_Dose-response_relationship_between_weekly_resistance_training_volume_and_increases_in_muscle_mass_A_systematic_review_and_meta-analysis

分析対象となった研究の数は15で、そのうち被験者がトレーニング歴有りとなっている研究の数は3つ。大部分の研究の被験者がトレーニング歴なしで、年齢性別も老若男女さまざま。

調べているのは、「部位あたりの週間のトータルのセット数」と筋肥大の関係。

結果への影響の大きい外れ値の研究(被験者はトレーニング歴あり)を除くと、週に5セット以下よりも週に5-9セットの方が筋肥大効果は高いが、週に10セット以上と週に5-9セットはほぼ同等という分析結果となっている(下表の赤線で囲った部分)。


この分析結果では大部分がトレーニング歴なしの被験者になっている。トレーニング歴なしの人が筋肥大を目指してトレーニングする場合は、部位あたり週に5-9セットのトレーニングボリュームが適切だということになる。部位あたり週に10セット以上やっても筋肥大の観点ではあまり意味がないかもしれない。

また週に5セット以下でもそれなりに効果が得られるようだ。時間や体力の無い初心者の人は各部位2セットを週に2回程度でも良いだろう。

トレーニング歴ありの人でも、鍛え込まれていない部位だと週に10セット以上やってもあまり意味がないかもしれない。例えば下半身は強いが上半身はあまり鍛えていないアスリートが、上半身も鍛えようとする場合がこのケースに相当する。



★セット数とレップ数
1セット8-12レップを週に5-9セット行うとすると、週に40-108レップ。部位あたり週2回トレーニングすると、一回のトレーニングで部位あたり20-54レップ。

以前の記事で紹介した研究では、一回あたり合計30-60レップのトレーニングボリュームが筋肥大を最適化するようだという結論だった。この研究でも主な対象は未経験者・初心者で、今回の研究とレップ数換算ではだいたい数字が一致する。トレーニング歴の無い人や始めたばかりの初心者は、一回のトレーニングで部位あたり2-5セット、合計レップ数20-60程度のボリュームで、これを週に2回程度行うのが筋肥大目的のトレーニングとして望ましいと考えられる。



★トレーニング歴のある人を対象とした研究
それではトレーニング歴のある人にはどの程度のトレーニングボリュームが良いのだろうか。予め断っておくと、研究の数が非常に少ないのでたいしたことはわからない。

今回のメタアナリシス研究で分析対象となったトレーニング歴ありの被験者の研究は3つ。それぞれ見ていくと、

(2)The Effect of Weight Training Volume on Hormonal Output and Muscular Size and Function
https://www.researchgate.net/publication/232177076_The_Effect_of_Weight_Training_Volume_on_Hormonal_Output_and_Muscular_Size_and_Function
被験者は20代前半の若い男性。実験開始前の平均値はスクワット1RMが約130kg、ベンチプレス1RMが約90kg。筋肥大の測定部位は、大腿直筋と上腕三頭筋長頭。週4回トレーニング(下表Table1参照)。1種目あたり1/2/4セット。測定部位についての週あたりの種目数は、大腿四頭筋が3種目(スクワット、レッグプレス、レッグエクステンション)、上腕三頭筋が6種目(ベンチプレス、インクラインベンチプレス、デクラインベンチプレス、クロースグリップベンチプレス、トライセップスプッシュダウン、トライセップスエクステンション)。7-12RM限界まで。

筋肥大については大腿直筋も上腕三頭筋長頭もグループ間では有意差なしという結果。大腿直筋断面積の変化は、1種目4セット・週に12セットの高ボリュームグループが+12.3%、1種目2セットグループが+4.6%、1種目1セットグループが+6.8%となった。有意差無しなのは被験者数が少ないためではないだろうか。このボリューム差なら、高ボリュームのほうが筋肥大効果が高い気がする。ただストレングスの変化(スクワット1RM)は差がない。上腕三頭筋長頭については測定機器の能力の問題か(筋肉の厚さが40mm程度で変化量が1mmか2mm、コンマ以下は測定できない模様)、上腕三頭筋の鍛え込みレベルがそれほど高くなくて1種目1セット・週に6セットの低ボリュームですでに刺激が飽和しているのか。もしくはベンチプレス系では短頭に負荷がかかりやすく測定対象となっている長頭への負荷がそれほど高くないためか。被験者のトレーニングレベルや1種目1/2/4セットというボリュームの比較は良い感じなのに、種目の選択と測定機器の性能がいまいちでなんだか惜しい研究。


(3)Dose-response of 1, 3, and 5 sets of resistance exercise on strength, local muscular endurance, and hypertrophy.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25546444
被験者は趣味でトレーニングしている若い男性。筋肥大の測定部位は、肘の屈筋と伸筋。部位あたり週に30セット、18セット、6セット(1種目あたり5/3/1セット・各部位2種目・週三日)。例えば肘の伸筋の種目はベンチプレスとトライセップスエクステンションで、それぞれ5セットを週三日やると肘の伸筋の週間セット数は30になる。8-12RM限界まで。30セットが最も良い結果。


(4)Three Sets of Weight Training Superior to 1 Set With Equal Intensity for Eliciting Strength
https://www.researchgate.net/publication/11043617_Three_Sets_of_Weight_Training_Superior_to_1_Set_With_Equal_Intensity_for_Eliciting_Strength
被験者は趣味でトレーニングしている若い男性。実験開始前のベンチプレス1RMは65kgくらい。メイン種目はベンチプレスとレッグプレスで3セットor1セット、これを週に3日。1セットグループは時間が余るので、その間にラットプルダウンやクランチやシーテッドロウなど他の種目を1セットずつ行った。3セットグループも時間が許せは同様の種目を行った。筋肥大については除脂肪体重の変化のみ測定で、グループ間で有意差はなし。研究の主目的であるストレングスの変化については、3セットグループの方が大きく伸びた。



★トレーニング歴のある人の推奨ボリューム
中級者以上は、部位あたり週に10セット以上は行った方が良いと思われる。コンパウンド種目だと対象の筋肉に負荷がどれくらいかかるか種目によっても人によっても異なり、部位あたりのセット数のカウントは単純ではないと思うけど(例えばロウ・プル系は上腕二頭筋のボリュームにカウントするか、スクワットはハムストリングのボリュームにカウントするか、デッドリフトは大腿四頭筋のボリュームにカウントするか)、部位あたり週に10-30セットくらいやるのが良いのではないだろうか。もちろん疲労を回復できる範囲で行うのが基本で、ハード過ぎると回復が追いつかず、結果が悪くなると考えられる。

一般論としては、鍛えられている筋肉ほどさらなる肥大には大きなトレーニングボリュームが必要になる。

どのくらいのボリュームが最適なのか、どのくらいやると逆効果なのか。研究の数が少ないし、トレーニングに対する反応には個人差(遺伝子や現状の筋肉レベルや栄養や疲労やストレスや睡眠や年齢など)が非常に大きいと考えられるので、反応を見ながら調整していくしかないだろう。

例えば下の研究では、トレーニング経験の無い被験者に、ニーエクステンション、レッグプレス、スクワットを各種目3セット、8-12RM限界まで。これを週に3日。つまり大腿四頭筋のトレーニングを週27セット。大腿四頭筋の筋肥大(外側広筋から採取した筋繊維の断面積の増加)が起こらなかった人もいれば、大きく筋肥大した人もいた。このようにトレーニングに対してどう反応するかは、個人差が非常に大きい。

(5)Cluster analysis tests the importance of myogenic gene expression during myofiber hypertrophy in humans
http://jap.physiology.org/content/102/6/2232.long


若い→20-35歳
高齢→60-75歳

筋肥大の程度で3つのクラスターに分けた。クラスター内の内訳は以下の通り。
XTR) 筋肥大反応が非常に良いクラスター:若い女性3人、若い男性9人、高齢女性3人、高齢男性2人
MOD) 筋肥大反応がほどほどクラスター:若い女性8人、若い男性11人、高齢女性7人、高齢男性6人
NON) 筋肥大反応が見られないクラスター:若い女性5人、若い男性1人、高齢女性5人、高齢男性6人

若い男性の未経験者でトレーニングしても筋肥大が起こらないのは少数だと思われる。栄養と睡眠とストレス管理に気をつけて、適度なボリュームのトレーニングを行えば、程度の差はあれほとんどの若い男性で筋肥大は起こるだろう。一方、若い女性や高齢男女では筋肥大がなかなか起きないケースも結構あるようだ(この研究のトレーニング内容がハード過ぎたのかもしれないが)。